ポイント
この記事では、立効散についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、立効散についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、立効散という漢方薬が出ています。このお薬は、歯の痛みに昔からよく使われるお薬です。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。漢方ですので西洋薬の痛み止めより胃に優しいです。一度、試してみてください。
身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
漢方医処方の場合の説明
今日は、立効散という漢方薬が出ています。このお薬は、歯の痛みがある場合や、抜歯後の痛みによく使われるお薬です。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、「立ちどころに効く薬」と言われ、昔から歯の痛みに使用している漢方です。
一度、試してみてください。
漢方ですので西洋薬の痛み止めより胃に優しいです。
身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシー
偽アルドステロン症
冷え
添付文書(ツムラ110番)
ツムラ立効散(外部リンク)
立効散についての漢方医学的説明
生薬構成
細辛2、升麻2、防風2、甘草1.5、竜胆1
出典
衆方規矩
条文(書き下し)
「牙歯痛んで忍び難く、微し寒飲を悪み、大いに熱飲を悪み、脈三部陰盛陽虚す。これ五臓内に盛んに、六腑陽道の脈微小にして小便滑数なるを治す。」
条文(現代語訳)
「歯が痛んで我慢できず、少し冷たい物を嫌い、非常に熱いものを嫌い、三脈全て陰が盛んで陽が虚すもの。この処方は五臓の内部が実して、六腑の陽の脈が虚して、尿を何回も出すものを治す。」
解説
今回は、立効散の処方解説になります。名前の通りの効能とされ、歯痛に対して「立ちどころに効く薬」と言われています。
それでは、まずは条文を見ていきます。条文は、要約しますと「歯痛があり、冷たいもの熱いもの両方を嫌がるもの。脈の所見において陽虚陰盛で尿の回数の多いもの。」となります。
条文にも歯痛という言葉があり、この所見が本処方を使う目標になる事が解ります。
また、「三脈の陽虚陰盛」というのは、寸口(すんこう)、関上(かんじょう)、尺中(しゃくちゅう)という左右それぞれにある脈全てにおいて、触れるだけの場合に脈が取れず、グッと押し込むと強く触れるものになります。
臓腑において、臓は陰、腑は陽となりますので、この様な脈が現れます。
次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、それぞれ
気を昇らせ九竅を利す、風寒湿を去る:細辛
昇堤作用:升麻
祛風湿:防風
緩和、諸薬の調和:甘草
去湿熱:竜胆
の様になります。
本処方は、後世方でよく使用される升麻や防風が使用されていますが、出典が中国書籍ではなく衆方規矩(しゅうほうきく)という日本の書物となります。
しかし、その構成は漢方の理論に沿ったものであり、そう言った意味では漢方薬という事が出来ます。
つまり、この処方の特徴は「陽虚陰盛」であり、陽(気や熱、動き等のエネルギー)が虚したものが適応となります。
陽虚陰盛というのは、脈から考えますと経絡を気が巡っていない状態となります。ですので、気虚様症状も周辺所見として見て置く必要があります。
その止まった陽気を動かす為に、九竅を利す(きゅうきゅうをりす:身体の穴の気を通す)細辛を使用しています。
これで陽の気を巡らせて盛んにするのと同時に、風湿熱の邪を処理するという訳です。
只、陽の気を盛んにするのは裏から表への流れをつけるだけで、脾胃を補って気を満たすという事ではありません。脾胃の虚がある場合は、先にそちらを治す必要があります。
まとめますと、立効散は「歯の痛みがあり、冷飲熱飲を嫌がり、気虚様症状があり、小便に何回も行くもので、三脈が陽虚陰盛となるもの。」となります。
本処方は、著しい気虚や裏寒がある場合は不適になりますので、注意が必要です。
鑑別
立効散と他処方との鑑別ですが、代表的なものに排膿散及湯があります。詳しく解説していきます。
排膿散及湯
立効散と排膿散及湯は、共に歯科領域の処方であり、鑑別対象となります。
排膿散及湯は、その処方名の通り膿を出す処方となります。歯科領域では、歯槽膿漏等で歯茎が腫れて化膿しているものに使用します。
対して、立効散は抜歯後疼痛や知覚過敏等、神経の痛み等に使用しますので、その辺りで鑑別が可能となります。
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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