ポイント
この記事では、桔梗湯についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方」のムセキです。
本記事は、桔梗湯についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、桔梗湯という漢方薬が出ています。このお薬は、喉が痛い場合によく使われるお薬です。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、喉の炎症を抑えて膿を出す効果がありますので、一度、試してみてください。
漢方医処方の場合の説明
今日は、桔梗湯という漢方薬が出ています。このお薬は、喉が痛い場合によく使われるお薬です。応用で、副鼻腔炎や後鼻漏、扁桃腺炎等にも使用する事もあります。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、喉の炎症を抑えて膿を出す効果がありますので、一度、試してみてください。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシー
偽アルドステロン症
冷え
添付文書(ツムラ138番)
ツムラ桔梗湯(外部リンク)
桔梗湯についての漢方医学的説明
生薬構成
甘草3、桔梗2
出典
傷寒論、金匱要略
条文(書き下し)
「咽痛し、甘草湯を与うるも差えざる(いえざる:癒えざる)証。
「咳して胸満し、振寒して脈数、咽乾きて渇せず、時に濁唾の腥臭(せいしゅう:生臭い臭い)なるを出だし、久久にして膿を吐する証。」
条文(現代語訳)
「咽が痛み、甘草湯を与えても治らないもの。」
「咳をして胸がいっぱいになり、寒さでブルブル震えて脈は数、咽が乾いても水を欲しがらず、時に濁った生臭い唾を出し、長く膿を出しているもの。」
解説
今回は、桔梗湯の処方解説になります。この処方は、一般的に喉の腫れに使われています。
それでは、まずは条文を見ていきます。条文は簡潔にまとめますと、「喉の痛みや、喉が渇いても水を欲しがらず、生臭い唾や膿を出すもの。」となります。
ポイントは、腫れるだけでなく、膿が溜まっているという所ですね。現代ではそういう場合は抗生物質を使いますので、桔梗湯の出番はそれほど無い様に思います。
ですが、酷く無い場合等には桔梗湯の適応の方が良い場合もあります。
次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、それぞれ
抗炎症:甘草
排膿:桔梗
の様になります。甘草湯という生甘草を使う処方があります。これも恐らく生甘草の方が良いでしょう。
生甘草は炙甘草よりも抗炎症作用が強くなるとされていますので、その様な目的の場合は経験的に生甘草が使われます。
また、この処方のポイントは桔梗が含まれている所です。
桔梗には排膿・去痰作用がありますので、この処方の場合はその所見に膿が溜まっているという事が解ります。
その事より、桔梗湯の適応は、現代医学的な病名を当てはまるならば副鼻腔炎や後鼻漏、扁桃腺炎等が適応になるものと考えられます。
また、この処方は生薬構成も緩和な組み合わせですので証に拘らずに使え、安全性が高いのがポイントです。
飲み方も少し変わっていて、口に含み少しずつゆっくりと白湯で溶かしながら飲み込むという方法を取ります。
以上まとめますと、桔梗湯は「喉の痛みや、喉が渇いても水を欲しがらず、生臭い唾や膿を出すもので、喉の痛み、副鼻腔炎や後鼻漏、扁桃腺炎等に使用の機会がある処方。ゆっくりと少しずつ飲み込んで服用する。」となります。
応用になりますが、本処方を使用して托裏消毒飲(たくりしょうどくいん)や内托散(ないたくさん)等、気力体力を高めながら身体の毒を消す処方を合方で作り出す事が出来ます。
気血両補剤(十全大補湯、人参養栄湯、大防風湯)等と同時に飲ませる事で、「膿を出した方が早く治る場合は排膿し、腫れを治めた方が良い場合は腫れを引かせる。」という面白い効能を狙う事が出来ます。
この様な使い方も覚えておくと良いでしょう。
鑑別
桔梗湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに甘草湯、小柴胡湯加桔梗石膏、半夏厚朴湯、排膿散及湯があります。それぞれについて解説していきます。
甘草湯
桔梗湯と甘草湯は、共に同じ喉の痛みで使用する処方であり、鑑別対象となります。
桔梗等は、甘草湯に桔梗を足した処方です。ですので、桔梗が入っているかどうかの差しかありません。
桔梗の主効能は排膿になりますので、腫れが酷いかどうかの差か、条文に在るように膿を吐いているかの差になります。
その辺りで鑑別が可能です。
小柴胡湯加桔梗石膏
桔梗湯と小柴胡湯加桔梗石膏は、共に同じ喉の痛みで使用する処方であり、鑑別対象となります。
小柴胡湯加桔梗石膏は、小柴胡湯に桔梗と石膏を足した処方となります。経験的に、風邪の中期ののどの痛みに使用されてきました。
桔梗湯との鑑別は、柴胡証の所見(胸脇苦満、目つきが鋭い、怒りの雰囲気、浅黒い肌等)があるかどうかです。また、顔が赤く身体に熱を持っているかどうかという差もあります。
桔梗湯には柴胡は含まれませんので、明らかに柴胡証の所見は無く、また身体に熱を持っている様な様子も見られません。その辺りで鑑別が可能となります。
【漢方:109番】小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)の効果や副作用の解りやすい説明
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半夏厚朴湯
桔梗湯と半夏厚朴湯は、同じ喉の痛みやイガイガで使用する処方であり、鑑別対象となります。
半夏厚朴湯は、処方名にもある通り厚朴を含む処方となります。厚朴は、胃が詰まって動きが悪い場合に使用の場があります。
胃の動きが悪い場合、それが原因で喉がイガイガする事があり。ヒステリーボールとも呼ばれます。この喉のイガイガが、桔梗湯の適応と勘違いされやすいポイントです。
半夏厚朴湯は、胃の詰まりがあるが為に非常に顔つきが固くなります。また、我が強くて頑固な人が多いという特徴があります。
桔梗湯の場合、その様な所見はありませんので、その辺りで鑑別が可能となります。
【漢方:16番】半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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排膿散及湯
桔梗湯と排膿散及湯は、共に排膿作用がある為鑑別対象となります。
排膿散及湯は、その処方名の通り排膿を強く意識した処方となります。桔梗湯も排膿しますが、より排膿に傾いた処方が排膿散及湯と言えます。
また、桔梗湯は咽喉部に限って使われる事が多いのですが、排膿散及湯は全身の化膿疾患に使用されています。
ですので、使用部位の違いでの鑑別で良いでしょう。
【漢方:122番】排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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