ポイント
この記事では、紫雲膏についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方」のムセキです。
本記事は、紫雲膏についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、紫雲膏という漢方の塗り薬が出ています。このお薬は、一般的に痔や火傷の場合によく使われるお薬です。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、傷の治りを早めますので、一度、試してみてください。
赤い色と胡麻油の匂いが強いお薬ですので、薄くのばす等、工夫して使用してみてください。
漢方医処方の場合の説明
今日は、紫雲膏という漢方の塗り薬が出ています。このお薬は、一般的に痔や火傷の場合によく使われるお薬です。他にも、ひび、あかぎれ、しもやけ等にもよく使われています。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、傷の治りを早めて、また、患部の保護をしてくれますので、一度、試してみてください。
赤い色と胡麻油の匂いが強いお薬ですので、うっすらと伸ばして使ったり、また、ガーゼやばんそうこうで患部を覆う等の対策をした方が良いでしょう。
主な注意点、副作用等
過敏症(発疹、そう痒)
添付文書(ツムラ501番)
ツムラ紫雲膏(外部リンク)
紫雲膏についての漢方医学的説明
生薬構成
胡麻油100、紫根10、当帰10、蜜蝋27.0、豚脂1.8
出典
華岡青洲(外科正宗の潤肌膏を元に改良)
条文(書き下し)
無し
解説
今回は、紫雲膏の処方解説になります。この処方は、華岡青洲が外科正宗の潤肌膏(じゅんきこう)という処方を元に創方したものとして有名です。
詳しくは、元々和剤局方の「神効当帰膏(当帰、胡麻油、蜜蝋)」に紫根を足して外科正宗の「潤肌膏」となり、それに華岡青洲が豚脂を足して「紫雲膏」としたようです。
本処方は、医療用では火傷、痔核の疼痛、肛門裂傷等に使用され、一般用医薬品では、ひび、あかぎれ、しもやけ、魚の目、あせも、ただれ、火傷、外傷、痔の疼痛、肛門裂傷、かぶれ等に使用されています。
適応の問題で、医療用より一般用医薬品の方が使用出来る幅が広いのが特徴です(構わずにガンガン使われている先生もお見えですが)。
次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、それぞれ
軟膏基剤、保湿:胡麻油、蜜蝋、豚脂
消炎、肉芽生成促進、抗菌:紫根
補血、肉芽生成促進:当帰
の様になります。
生薬構成から、油脂性の軟膏基剤で肌を潤す作用の強い生薬が配合されている事が解ります。塗布した所は肉芽の生成が促進され、傷の治りを早めます。
この傷の治りを早めるという効果が、痔や裂傷、火傷、あかぎれ等の組織修復を最優先しなければいけない病態に適していると考えられます。
逆に、排毒が必要なものや、熱を取る必要のある病態の場合は、肌を潤わす事が痒みなどを生み出してしまう原因になる場合もあります。
只、紫雲膏の使用した経験としては「合う合わないがはっきりとしている処方。」と思います。
私の経験では、紫雲膏が合う方は自分自身から「紫雲膏下さい」と申し出られる事が多いです。合わない場合は一回使ったっきり使わないという方が多いです。
また、ハンドクリームとして使用する場合は非常に優秀なので、一度小さいチューブを買って合うかどうか試されてみても良いでしょう。
その場合、色と匂いが気になりますので、少量を取って薄く延ばす様に塗るのがコツです。
鑑別
紫雲膏と他処方との鑑別ですが、代表的なものにステロイド剤、保湿剤(ヘパリン類似物質、尿素)、ワセリンがあります。それぞれについて解説していきます。
ステロイド
紫雲膏とステロイド剤は、使用目的が被る為、鑑別対象となります。
単純な抗炎症作用の強さから行けば基本的にステロイドに分があるのですが、紫雲膏に特有の肉芽形成作用、血行促進作用はステロイドよりも強いように私は感じています。
ひび、あかぎれ等の乾燥を伴う裂傷やしもやけなどで、それほど酷くなく、本処方の色と匂いが気にならないという事であれば、紫雲膏が優先される場も考えられます。
逆に、とにかく炎症を抑えたいという事であれば、素直に該当ランクのステロイドを使用される事をお勧めします。
また、あまり例はありませんが、両方を直前に混ぜて使用するという方法もあります。
アトピーの場合、紫雲膏が劇的に合えば別ですが、基本的にはステロイドと保湿剤使用の方が無難です。
そうしておいてから、内服の漢方や運動、睡眠、脱ストレス、食生活等で体質改善をする方が賢いのではないでしょうか。
保湿剤(ヘパリン類似物質、尿素)
紫雲膏と保湿剤(ヘパリン類似物質、尿素)は、使用目的が被る為、鑑別対象となります。
紫雲膏と保湿剤の違いは色々とありますが、大きな違いは次の2つです。
①肉芽生成促進作用があるかどうか
②水を使用した基剤かどうか
単に保湿と言っても、紫雲膏の保湿は油脂による皮膚保護と、肉芽生成促進作用による組織修復がメインになります。
逆に、ヘパリン類似物質製剤や尿素製剤等は水を組織に与えて文字通り「保湿」する事がメインとなります。
ですので、どちらか迷った場合は、傷の部分には基本的にはクリームやローション基剤である保湿剤は使いづらいので油脂基剤である紫雲膏が適応、逆に広範囲を保湿したい場合は保湿剤を選択すると良いでしょう。
ワセリン
紫雲膏とワセリンは、使用目的が被る為、鑑別対象となります。
紫雲膏とワセリンは両方油脂性基剤の軟膏であり、皮膚保護に優れています。
只、肉芽形成作用の促進、消炎、抗菌の作用というのは紫雲膏にあってワセリンには無い作用となります。
また、ワセリンは匂いが無臭に近く、また透明なのに対して、紫雲膏は胡麻油の匂いと赤い色が付くという部分で差があります。
その作用(特徴)が要るか要らないかで判断すれば良いでしょう。
例えば、痔による肛門裂傷等では、肉芽形成作用があった方が良いですし、目に触れない所ですので、匂いや色があってもまだ大丈夫です。
しかし、唇の荒れ等では、紫雲膏の匂いと色はデメリットが大きいので、どちらかというとワセリンで保護するだけの方が良いという判断になる事が多くなります。
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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