ポイント
この記事では、桂芍知母湯についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方」のムセキです。
本記事は、桂芍知母湯についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、桂芍知母湯という漢方薬が出ています。このお薬は、関節痛やリウマチの場合によく使われるお薬です。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、身体を温め、痛みを和らげてくれますので、一度、試してみてください。
身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
漢方医処方の場合の説明
今日は、桂芍知母湯という漢方薬が出ています。このお薬は、関節痛やリウマチの場合によく使われるお薬です。
身体が痩せて、関節等が腫れているものに昔から使用されてきました。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、身体を温め、水の毒を取って痛みを和らげてくれますので、一度、試してみてください。
身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシー
偽アルドステロン症
過敏症(発疹、発赤、そう痒等)
自律神経系(不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身脱力感、精神興奮等)
消化器(食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐等)
泌尿器(排尿障害等)
のぼせ、舌のしびれ等
冷え
添付文書(クラシエ180番)
クラシエ桂芍知母湯(外部リンク)
桂芍知母湯についての漢方医学的説明
生薬構成
桂皮3.0g、知母3.0g、浜防風3.0g、生姜1.0g、芍薬3.0g、麻黄3.0g、白朮4.0g、甘草1.5g、附子1.0g
出典
金匱要略
条文(書き下し)
「諸肢節疼痛,身體旺羸(しんたいおうるい:身体が非常にやせ衰える),脚腫脱するが如く(きゃくしゅだっするがごとく:脚が飛び出るように腫れ),短気(たんき:息切れ),温温として(うんうんとして:ムカムカと気持ち悪くて)吐せんと欲するは,桂枝芍薬知母湯之を主る。」
条文(現代語訳)
「身体全体の関節が痛み,身体が非常にやせ衰え,脚が飛び出るように腫れ,息切れし,ムカムカして気持ち悪く吐きそうになるものは,桂枝芍薬知母湯が良い。」
解説
今回は、桂芍知母湯の処方解説になります。この処方は、一般的に関節痛やリウマチ等に使われています。
それでは、まずは条文を見ていきます。条文は、要約しますと「関節が腫れて痛んで、痩せて息切れや吐き気があるもの。」という事です。
条文から考えますと、痛みから消化器症状が出ているものに使用している感じですね。
次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、それぞれ
解表:桂皮、麻黄
腎熱を清す:知母
潤肺:浜防風
利水、健胃:生姜、白朮
補陰:芍薬
緩和、諸薬の調和:甘草
温裏・止痛:附子
の様になります。面白いのは、解表の麻黄と桂皮、温を温める附子、腎熱を取る知母が同時に使用されている所です。
ここまで表裏共に手を加える処方は傷寒金匱では珍しく、昔からこの病態に難儀したのだと考えられます。
この処方の効果の最奥は知母になります。腎熱と呼ばれる奥の熱を取る氷の様な生薬で、この生薬が入っていると「邪が深く入っていて中々難しい病気だな。」と解ります。
その部分を改善し、筋に栄養を与え、痛み等を改善させる処方が本処方のポイントとなります。
桂枝や麻黄が入っておりますので、表証(逆上せ、悪寒、悪風、発熱、頭痛、頬が桜色等)があり、また汗は出ていないのが特徴となります。
身体がやせ衰えているという割には、麻黄、桂皮、芍薬が入っており、脾胃の虚弱は無いのが特徴です。吐き気云々あるのは、痛みから来ているのでしょう。
食欲があれば大丈夫かと思います。
以上まとめますと、桂芍知母湯は「表証(逆上せ、悪寒、悪風、発熱、頭痛、頬が桜色等)があり、食欲があるが痩せているもので関節が腫れて痛んで息切れや吐き気があるもの。」となります。
本処方は、裏寒や脾虚がある場合には不適となりますので注意が必要です。
鑑別
桂芍知母湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに桂枝加朮附湯、越婢加朮湯、大防風湯、麻杏薏甘湯があります。それぞれについて解説していきます。
桂枝加朮附湯
桂芍知母湯と桂枝加朮附湯は、共に関節痛や神経痛等に使用する処方であり、鑑別対象となります。
桂枝加朮附湯は、桂芍知母湯とは違い麻黄がはいっておりません。ですので、表証はありますが発汗しているのが特徴です。
また、身体がそこまでやせ衰えておらず、足が腫れているという事もあまりありません。
桂芍知母湯は汗が無く、腫れて痛みが激しいのが特徴ですので、その点で鑑別出来ます。
【漢方:18番】桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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越婢加朮湯
桂芍知母湯と越婢加朮湯は、共に全身の痛み等に使用する処方であり、鑑別対象となります。
越婢加朮湯は、肉極と言い肌肉部分に熱水が溜まり腫れているものに使用します。
また、関節に限って症状が出ている訳では無く、やせ衰えている訳でもありません。
更に、表証もありませんので、その辺りで桂芍知母湯とは鑑別出来ます。
【漢方:28番】越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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大防風湯
桂芍知母湯と大防風湯は、共に関節痛や神経痛等に使用する処方であり、鑑別対象となります。
大防風湯は、気血両虚と腎虚が併発している場合に使用します。栄養不良でやせ衰えているのが特徴です。
桂芍知母湯とも病態が似ている様に思いますが、桂芍知母湯の様に激しい痛みや吐き気、脚の腫れはありません。どちらかというと鈍く持続的な痛みが続きます。
この辺りが鑑別ポイントとなります。
【漢方:97番】大防風湯(だいぼうふうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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麻杏薏甘湯
桂芍知母湯と麻杏薏甘湯は、共に全身の痛み等に使用する処方であり、鑑別対象となります。
麻杏薏甘湯は、全身の腫れが特徴で、筋肉におけるリウマチ性の痛みに使用される処方となります。
桂芍知母湯は痩せて関節を中心とした痛みであり、痛みの出方が違いますのでその部分で鑑別出来ます。
続きを見る【漢方:78番】麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)の効果や副作用の解りやすい説明
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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