ポイント
この記事では、桂枝加竜骨牡蛎湯についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、桂枝加竜骨牡蛎湯の解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料としてご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明、漢方医処方の場合の説明共通
今回は桂枝加竜骨牡蛎湯という漢方薬が出ています。
この処方は、本来は身体の新陳代謝等に使われるべき元気が、本来ならば行かない所に行って悪さをしている場合に使います。
漢方では、気が漏れるという表現をします。
この状態になりますと、デリケートゾーンの湿疹や髪の毛が抜けたり、不眠になったりと色々な症状が出てきます。
また、思春期に多くこの様な症状が出ますので、大体この漢方を飲まれる患者さんは10代の方が多いです。
〇〇といった症状も、それが原因だと先生は考えていらっしゃるようですので、一度飲んでみて下さい。
身体が冷えてくると効きが悪くなりますので、冷えに気を付けて規則正しい生活をしましょう。
身体が冷えてきた、胃腸が気持ち悪い、下痢等の症状があればご一報頂ければと思います。
一日〇回△日出ておりますので、指示通りお飲みください。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシー
偽アルドステロン症
発疹、発赤、そう痒等
冷え
添付文書(ツムラ26番)
桂枝加竜骨牡蛎湯についての漢方医学的説明
生薬構成
桂枝4、芍薬4、甘草2、大棗4、生姜1.5、竜骨3、牡蠣3
出典
金匱要略
条文(書き下し)
「夫れ失精家,少腹弦急,陰頭寒,目眩,髪落つ,脈極虚孔遅なれば,清穀亡血失精と為す,脈諸を孔動微緊なるに得れば,男子は失精,女子は夢交とす,桂枝加竜骨牡蛎湯之を主る。」
条文(現代語訳)
「腎から精が漏れる者、少腹(しょうふく:へその斜め下)が引きつり、陰頭が冷たく、眩暈し脱毛があり、脈が極虚孔遅(きょくようこうち:極めて虚脈で、たまに穴があり遅い。)であるなら、失精による血虚であるとし、脈が孔動微緊(こうどうびきん:脈のタイミングに穴はあるが、動きはあり、若干緊である。)であれば、男子は失精,女子は夢交である。桂枝加竜骨牡蛎湯で治ります。」
解説
桂枝加竜骨牡蛎湯は、桂枝湯に竜骨と牡蠣を加えた処方となります。
本処方に関しては、条文と生薬構成が非常に解りやすく簡易で、そのまま「失精による諸症状+桂枝湯証」というイメージで使えます。
竜骨牡蠣というのは、心を落ち着かせて腎精が漏れ出るのを強固に抑えます。それで腎気を守り、桂枝湯でその気を運用する処方と言えます。
桂枝湯の逆上せや頬の赤みがあり、陰部湿疹や、青春期の腎精の漏れで起こる諸症状、脱毛、フケ症等に主に使用されます。
私の漢方の師匠先生は、10代の患者さんによく使われていました。
桂枝湯がそのまま入っていますので、小建中湯等や当帰四逆加呉茱萸生姜湯等と鑑別されながら使っていたように記憶しています。
鑑別
桂枝加竜骨牡蛎湯は桂枝湯類になりますが、その中でも解説に書きました小建中湯等や当帰四逆加呉茱萸生姜湯と鑑別する事が多い処方になります。
簡単にですが、鑑別を書いておきます。
小建中湯との鑑別
小建中湯と言いますか、建中湯類との鑑別になります。建中湯類は、手足反熱、手掌発汗が強く、逆上せがあり、両腹直筋の緊張が強いのが特徴です。
逆に、陰部湿疹や不眠、髪の毛が落ちる等の所見はありません。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯との鑑別
当帰四逆加呉茱萸生姜湯との鑑別は、一見しますと同じ様に見えます。
ですが、当帰四逆加呉茱萸生姜湯は手先の冷えやあかぎれしもやけなどの循環不良による冷え症状が強く、陰部湿疹や不眠、髪の毛が落ちる等の所見は無いのが特徴になります。
続きを見る【漢方:38番】当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
お読み頂きありがとうございます。
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