名古屋を中心とする東海地方の漢方医学と、それに基づいた健康・美容情報等をご紹介します。

名古屋漢方

漢方的健康情報

漢方の飲み方にコツってありますか?大丈夫。薬剤師がご紹介します!

更新日:

はてな

漢方薬の飲み方、普通に水で飲むのが正しいのかな?お湯に溶くのが良い、みたいな話もあるし。後、子供って漢方嫌がるんだよね・・・。

このような疑問をスッキリ解決します。

「名古屋漢方」のムセキです。私が漢方を専門に勉強し始めて10年以上が経ちます。

お薬を渡す際に漢方の飲み方について患者さんからよくご質問を受けますが、そのような疑問をお持ちの方は結構多いと感じ、この記事を書かせて頂きました。

ムセキ
もし宜しければご活用下さい。少しでもお役に立てれば幸いです。

この記事は以下の様な構成になっています。

ポイント

  • 漢方の飲み方は「元々の漢方薬の形(剤形)や条文」に沿うのが理想
  • 現実には白湯で飲むのが無難
  • お茶やジュースが不向きな理由
  • 漢方を飲む時間は食前か食間
  • 漢方が飲みにくい場合の対処法
  • 子供に漢方を飲ませる時のコツ

自分自身の行う服薬指導も上記のポイントを頭に入れて行っています。特に、「子供に漢方を飲ませる時のコツ」を患者さんにお伝えすると喜ばれる事が多いです。

それでは、宜しくお願い致しますm(_ _)m

*本記事は5000字越えの長文となっております。目次で目的の箇所を探していただけると便利です。

スポンサーリンク

漢方の飲み方は「元々の漢方薬の形(剤形)や条文」に沿うのが理想

ムセキ
最初に、理想的な飲み方をご紹介します。

漢方の飲み方は、専門家の中でも結構意見が分かれています。

水で良いという方も居れば、お湯に溶いた方が良いという方も見えます。また、冷やす薬は水で、温める薬はお湯で、という方も見えます。

結論を先に言いますと、「漢方薬の形(剤形)や条文に沿う」のが理想、という事になります。「~湯」「~散」「~丸」等によって飲み方を変える、という事ですね。

漢方のエキス剤の場合、元々の飲み方に近い飲み方をする事で、完全では無いですが元々の効き方に似た効き方になります。

しかし、現実的に条文通りに飲む場合、問題の出る事もあり、一概には言えない所が中々難しい所です。

ムセキ
それぞれの剤形や項目で見出しを作ってご紹介していきます。

「~湯」と名付けられた漢方の飲み方

「~湯」と名付けられた漢方の飲み方ですが、「湯」というのは文字の通りスープになります。

最初から成分が溶けているので、効きが早いのが特徴です。

しかし、基本的には水で煮るので、加熱すると成分が飛んでしまったり分解してしまう生薬、水に溶けにくい成分を含む生薬等は、スープの中に溶け辛いのがデメリットになります。

そのような特徴がありますので、基本的には温かいスープの状態にして飲むのが理想です。

エキス剤ですと、お湯に溶いて溶かしてから飲ませます。

ちなみに、医療用漢方大手のK社さんは、「細粒(さいりゅう)」という剤形でサラサラとしてお湯に溶けやすく、T社さんの顆粒(かりゅう)剤は粒が大きくザラザラとして、お湯に溶けにくく出来ています。

もし顆粒を溶かしてスープのようにするのであれば、お湯に溶いて少し放置するのがポイントです。

そうしますと、顆粒の粒がふやけますので、お湯に溶けやすくなります。

「~湯」と呼ばれる漢方の場合、スープを口に含んで味わった時点で身体に作用しますので、薬の効果は出始めていると言えます。

「~丸」「~散」と名付けられた漢方の飲み方

漢方の名前の最後が「~丸」「~散」となっているものは、「~丸」の場合はハチミツや米粉で練ったもの、「~散」の場合は生薬を粉末にした後に量り取って混ぜ合わせたものになります。

「~湯」と違い、生薬の成分全てが丸々入るのが特徴です。また、「~丸」は、他の剤形に比べてゆっくりと成分が出てくるという特徴もあります。

これらを飲む場合は、お湯ではなく白湯(ある程度冷ました人肌より少し温かいお湯)で飲むのが良いです。

あまり熱いと熱に弱い成分が壊れたり、逆に冷たいと胃腸を冷やしてしまうのが理由となります。

「~飲」と名付けられた漢方の飲み方

「~飲」と名付けられた漢方は、清心蓮子飲(せいしんれんしいん)や連珠飲(れんじゅいん)と言ったように、数は少ないですが存在します。

「~飲」という漢方は、「~湯」と同じ様に生薬を水で煮だしたものになりますが、それを熱いまま飲むのではなく、冷まして飲むものに対してそう名付けられています。

ですので、「~飲」という名前の場合は基本的には「~散」「~丸」と同じように白湯で飲むのが理想です。

「~料」と名付けられた漢方の飲み方

「~料」というのは、元々の剤形とは違う剤形の場合につける名前になります。

医療用の漢方薬を見ていると、「~湯」「~飲」と書いてあるのはそのままで、「~散」「~丸」となっているものは「~料」がついています。

「~料」とある場合は、その一つ手前の文字が元々の剤形になりますので、その剤形の飲み方で飲むのが理想です。

特殊な飲み方をする漢方等

漢方の中には、特殊な飲み方をする漢方があります。いわゆる例外品になります。数もそこまで多くないです。

甘草湯(かんぞうとう)、桔梗湯(ききょうとう)

喉の腫れや痛みに使う薬です。これは、患部が丁度喉になりますので、お湯で溶かして、ゆっくりと飲み込む方法が適しています。

直接炎症を取ってしまおうという考え方になります。

八味地黄丸(はちみじおうがん)

八味地黄丸が最初に出てくる書物には「酒で飲む」となっています。

しかし、この漢方は老化防止や泌尿器、糖尿病などの生活習慣病に対して使う処方になりますので、現代ではこの飲み方は不向きと言えます。

ですので、八味地黄丸は白湯で飲むのがベターです。

栝楼薤白白酒湯(かろがいはくばくしゅとう)、栝楼薤白半夏湯(かろがいはくはんげとう)

難しい名前の漢方です。この処方はエキス剤には無く、煎じ薬として作るしかありません。

しかし、これらの処方は「水」ではなく「お酢(白酒)」で煎じます。

ですので、とても飲みにくく、逆に悪くなりにくいので冷蔵庫等に入れて、1日2回程度、少しずつ飲みます。

屠蘇散(とそさん)

お正月に飲まれるお屠蘇になります。ご存じの通りですが、日本酒やみりんに一晩漬けこんで、エキスが出た液体を飲みます。

ちなみに屠蘇というのは、「蘇(そ:邪気)を屠(ほふる:葬る)。」という意味で、一年の邪気払いとして親しまれています。

地方によっては、日本酒をお屠蘇と呼んで飲んでいる所もあります。

効能による飲み方の切り替えは間違い

ムセキ
剤形を見ると、この理屈が変である理由が解ります。

上でも少し出ましたが、よく「冷やす薬は冷たい水、温める薬はお湯で。」と言われる治療家の先生が見えます。これは実は正しくありません。

例えば、「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」「竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)」「猪苓湯(ちょれいとう)」という熱取りの漢方処方がありますが、これらは全て「~湯」という文字がついています。

元々スープで飲むタイプの薬という事が解りますので、「冷やす薬は冷たい水、温める薬はお湯で。」というのは理屈が合いません。

また、漢方が盛んだった昔は、冷蔵庫が無かったので、冷水は冬場しか手に入れられません。

薬を飲むのにわざわざ冷水を調達したというのは考えにくいです。ですので、この理屈はちょっと考えにくいと言えます。

やはり、剤形によって飲み方を変えるのが妥当ではないでしょうか。

現実には白湯で飲むのが無難

ムセキ
理想は理想として、現実的な飲み方についての話です。

前の見出しで剤形による飲み方の違いをご紹介しましたが、実際はそこまで飲み方にこだわるのは難しいと思います。

現実的には、漢方を飲むのは白湯(ある程度冷ました人肌より少し温かいお湯)で飲むのが一番です。

例えば、熱いと飲みにくいですし、熱に弱い成分が無くなる可能性もあります。逆に、冷たいと身体が冷えてしまいますので、漢方の効果が落ちる可能性があります。

消去法で残った無難な選択ですが、白湯ですと手軽ですし、良い飲み方と言えます。

お茶やジュースが不向きな理由

ムセキ
特別な理由が無い限りは、お茶やジュースは避けた方が良いです。

前の見出しでは、白湯が一番良いとご紹介しましたが、その話をしますと患者さんから「お茶やジュースは駄目なの?」という質問をよく受けます。

結論を申し上げますと「お茶やジュースは不向き」という事になります。

西洋薬ならまだしも、漢方の場合はお茶やジュースで飲んだ場合は、「元の処方にそれらの成分が合わさった薬」という事になりますので、生薬の組み合わせが一つ増えて薬の効能が多少なりとも変化します。

実際に、茶葉を使った処方「川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)」もありますので、それ位慎重に考えた方が漢方の場合は良いです。

漢方を飲む時間は食前か食間

ムセキ
これも結構患者さんに聞かれる質問です。

漢方を飲む時間については、基本的には食前もしくは食間(しょっかん)となります。

食前とは、食事30分前が基本、食間は食事と食事の間のお腹が空いている時が基本になります。

たまに、食間を食事中と誤解される方が見えますので、私の場合、もし食間という処方で来た場合は「食事と食事の間、お腹空いている時です。」と申し添えています。

「大体の時間を教えて欲しい。」というご質問もよく頂きますので、その場合は「食後2時間位」とお伝えしています。

空腹時に飲む理由としては、食後ですと食事の影響を非常に大きく受ける為です(漢方の生薬構成が崩れる)。

只、医療用漢方の場合、飲み忘れ防止の為にわざと食後にしている事もありますので、その辺りは病院や薬局にお尋ね下さい。

漢方が飲みにくい場合、忘れる場合の対処法

ムセキ
味は結構重要です。また、忘れる場合は医師or薬剤師に相談を。

漢方の味が「苦くて嫌!」という方がよく見えます。また、「よく忘れるから何とかしてほしい」という質問もよくいただきます。

対処法は色々とありますので、ご紹介します。

1日3回飲むのが面倒

どうしても1日3回というのは、飲む回数も多くて面倒だと思います。

とにかく、漢方は空腹時に飲むのが大事ですので、携帯電話等のタイマーをセットして時間を決めておくと忘れにくくなります。

朝は起きたらすぐ飲む、昼はタイマーをセットして11時半頃、夕方は帰ってきたらすぐ、という感じで習慣化しておくのも良いです。

薬の袋等に書いてある飲み方とズレるようでしたら、予め医師や薬剤師と相談しておくと良いでしょう。

漢方が効いている気がするが、忘れる事が多い

この場合も、「1日3回飲むのが面倒」という見出しと同じようにタイマーをセットして飲み忘れを防止するか、習慣化してしまう方法が良いです。

これも医師や薬剤師に相談してみると、良い飲み方等を提案してくれるはずです。また、もし飲み忘れた場合、食後でも良いのですぐに飲む事が大事です。

しかし、次の飲む時間が迫っているようでしたら、一回飛ばして次の飲むタイミングで漢方を飲むようにします。

飲むと身体が楽になるが、味が嫌

この場合は、漢方が効いていると思って頂いて構いませんので、オブラートやゼリー状オブラートを使用して頂くのが良いです。

普通の丸いオブラートもありますし、袋状のオブラートもありますので、使いやすい方を試していただければ良いと思います。

国光オブラート丸型特大

ピップ袋状オブラート

らくらく服用ゼリー

らくらく服用ゼリー(スティックタイプ)

飲むと調子が悪くなるし、飲みにくい。

このような場合は、薬が合っていない可能性があります。一度、医師や薬剤師にご相談下さい。

意外と多いのですが、我慢して飲んでいる方も多くいらっしゃいます。ご自身の体調が一番ですので、そこは遠慮無しに聞いて頂いてOKです。

上4つの理由で、お薬が余ってきている

上記4つの理由、その他の理由で薬が余ってきている場合は、処方元の医師や薬を貰った薬局の薬剤師までご相談下さい。

ムセキ
勝手に自己判断で中止してしまうのが、一番良くないです。

もし処方された先生に相談し辛いというのであれば、薬局の薬剤師でも対応出来ます。是非、このような場合にはご活用下さい。

具体的には、相談させて頂いて漢方処方の日数を少なくする事で、先に残っている薬と合わせて飲んでもらう様に調整して減らしていきます。

子供に漢方を飲ませる時のコツ

ムセキ
とても苦労しますよね。

子供に漢方を飲ませるのに苦労する方は多いと思います。

最近は、そこまで小児科では出ない印象ですが、好きな先生は好きですので、漢方が出ないという事はありません。

子供に漢方が出た場合は、まずは白湯に溶いて飲んで頂く事をお勧めします。

その飲み方で試して、ダメなら漢方を練って上あごにつける、もしくは、白湯で溶いたものをスポイトを使って、舌の奥側に入れて貰うという方法を試していただきます。

口の奥側に薬が入ると、比較的苦みやえぐみを感じなくなりますので、それらの方法は理に叶っていると言えます。

それでもダメなら、ゼリー状オブラートや単シロップを使って漢方の匂いや味を抑えて飲むのを試します。ゼリー状オブラートで有名なものは、

龍角散の「おくすり飲めたね(いちご味)」

龍角散の「おくすり飲めたね(ぶどう味)」

龍角散の「おくすり飲めたね(チョコレート味)」

龍角散の「おくすり飲めたね(ピーチ味)」

があります。単シロップは、小児科の先生にご相談して頂ければ処方可能です。

大体は、ここまでで大抵のお子様は飲んで頂けます。

しかし、それでもダメなら、効き目が変わってしまう可能性がありますのであまり行いたくは無いですが、食品等と混ぜて食べさせます。

匂いや味が一番ごまかせるのはチョコレートクリームで、その次にアイスクリーム、ソフトクリームになります。これらに混ぜて食べさせます。

この方法でも飲んで頂けないようであれば、小児科の先生や、薬局の薬剤師に相談される事をお勧めします。

何をしても嫌がる場合は、薬が合っていない可能性があります。

場合によっては別のお薬になるか、飲むのが中止になる事もあります。何にせよ、まずは医師・薬剤師に相談するのが安心です。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
他の記事も宜しくお願い致します。

以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

参考記事
目次

続きを見る

Copyright© 名古屋漢方 , 2024 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.