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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:7番】八味地黄丸(はちみじおうがん)の効果や副作用の解りやすい説明

更新日:

ポイント

この記事では、八味地黄丸についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、八味地黄丸の解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料としてご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

メイン

一般的なもの、漢方医処方、漢方薬局等での説明(老年)

今日のお薬は、八味地黄丸と言います。

昔から、老化防止のお薬として使われてきて、頻尿や糖尿病等にも使われます。腰が重たいものにも使います。

地黄という生薬が入っていますので、胃もたれや下痢など起こす事がありますので、飲んでいる最中にそのような症状が出てきたらご連絡下さい。

また、身体が冷えてきた場合にも、ご一報頂ければと思います。

一日〇回△日出ておりますので、指示通りお飲みください。

漢方医処方、漢方薬局等での説明(若年、壮年)

今日のお薬は八味地黄丸と言います。

一般的にも、老化防止の薬として有名な薬です。別名、腎気丸、八味丸と呼ばれる薬で、老化と共に減る腎気を補う薬になります。

サンタクロースのようながっしりとして赤ら顔の、ニコニコしたお爺さんに使う処方です。

しかし、最近は若者であっても腎気が減っている方が見えますので、そういう方にも合う処方です。

腎気が不足している方で、老化防止、頻尿、腰が重い、アトピー、皮膚炎、喘息等、生活習慣病等、さまざまな病気に用いられます。毒出しの効果もあります。

地黄という生薬が入っていますので、胃もたれや下痢など起こす事がありますので、飲んでいる最中にそのような症状が出てきたらご連絡下さい。

また、身体が冷えてきた場合にも、ご一報頂ければと思います。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

発疹、痒み

肝機能異常(AST、ALT、ビリルビン値上昇等)

胃腸障害

冷え(裏寒)

添付文書(ツムラ7番)

ツムラ八味地黄丸(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

八味地黄丸についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

地黄6、山茱萸3、山薬3、沢瀉3、茯苓3、牡丹皮2.5、附子0.5、桂枝1

出典

金匱要略

条文(書き下し)

「崔氏八味丸は脚から気上りて小腹に入り不仁するを治す。」

「虚労、腰痛、少腹拘急し小便利せざるは、八味地黄丸、之を主る。」

条文(現代語訳)

「八味丸は脚から気が上って臍の下に入り軟弱になるものを治します。」

「疲れ、腰痛、臍斜め下がつっぱって小便が出にくいものは、八味地黄丸、これを治します。」

解説

八味地黄丸は多味ですが、金匱要略出典の古方になります。

条文にある通り、「小腹不仁(臍下の下腹部に力が無い)」や、虚労(疲れ、だるさ)、腰痛、少腹拘急(小腹の左右が突っ張って、押すと痛い)が目標となります。

望診では、私の漢方の師匠先生より「サンタクロースのようなお爺さんに合います。がっしりでっぷりしていて、赤ら顔でニコニコしていて、腰が重い人。」とコツを教わりました。

即ち、「脾虚が無く、心熱があり、腎虚の老人」という事になります。

生薬構成を見ますと、地黄、山茱萸(固精)、山薬(捕脾強壮→補腎)で主に補腎、沢瀉、茯苓で利水、牡丹皮で駆瘀血、附子、桂枝で裏→表を温め巡らします。

この処方は、桂枝が配されているという特徴があります。この桂枝が一味入るだけで、薬効は全て表へのベクトルになります。

即ち、腎気を補う効はあるのですが、その補った腎気を使う薬でもあるという事です。身体の陽である「機能」を補助する薬とも言えます。

この処方を使用する場合は、配合生薬に脾胃剤や温裏剤等が殆ど含まれていない為、脾虚や裏寒の患者には不適な処方となります。

医師の処方が出ている場合は、虚状が甚だしい場合は問い合わせ、そこまで酷く無ければ足湯やレッグウォーマー等で身体が冷え込まないようフォローする事が必要となります。

鑑別

上の見出しの続きで、処方鑑別を書いていきます。

例えば腎虚で陰(器質)のみを補いたいという場合は、桂枝は入らない方が良いので、六味地黄丸を使うという選択になります。

八味地黄丸と六味地黄丸は、それぞれ補腎剤の中で表裏の関係であると言え、腎虚で弱った身体の「機能」を補助するか、「器質」を補助するかで使い分けが必要となります。

ちなみに、牛車腎気丸はこの2つの方剤の中間に位置します。

これらの方剤を使う場合は、脾虚や気虚が無い事が大前提となります。

例えば、これら処方を使いたいが、気虚症状もある、という事であれば、大防風湯も考慮しないといけません。

また、女性の血の道症に使われる四物湯系統の薬との使い分けですが、地黄以外の生薬は、全て中、上焦の器質を補う方向にベクトルを向ける生薬になります。

ですので、四物湯は筋肉から上の臓器を補す処方と言えます。また、処方中に当帰が入るか、牡丹皮が入るかというのもあります。

当帰を入れた場合は心を補し、牡丹皮は瀉します。ですので、四物湯系統の場合は鬱々した様子で、八味地黄丸系統はニコニコした様子になります。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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