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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:92番】滋陰至宝湯(じいんしほうとう)の効果や副作用の解りやすい説明

更新日:

滋陰至宝湯

滋陰至宝湯

ポイント

この記事では、滋陰至宝湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、滋陰至宝湯についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、滋陰至宝湯という漢方薬が出ています。このお薬は、ストレスが溜まっていて色々と不調な方の咳等によく使われるお薬です。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、ストレスと咳を和らげます。一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、滋陰至宝湯という漢方薬が出ています。このお薬は、ストレスが溜まっていて色々と不調な方の咳等によく使われるお薬です。加味逍遥散に似たお薬です。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、ストレスを和らげて気分をさっぱりさせて、また、咳も和らげます。一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

偽アルドステロン症

消化器(食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢等)

冷え

添付文書(ツムラ92番)

ツムラ滋陰至宝湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

滋陰至宝湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

香附子3、柴胡3、芍薬3、知母3、陳皮3、当帰3、麦門冬3、白朮3、茯苓3、 貝母2、甘草1、薄荷1、地骨皮3

出典

万病回春

条文(書き下し)

「婦人諸虚百損、五労七傷、経脈調わず、肢体羸痩(したいるいそう:身体が痩せ衰える)するを治す。この薬はもっぱら経水を調え、血脈を滋し、虚労を補い、元気をたすけ、脾胃を健やかにし、心肺を養い、咽喉を潤し、頭目を清くし、心慌(しんきょう:そわそわする、慌てる等)を定め、神魄を安んじ、潮熱を退け、骨蒸を除き、喘嗽を止め、痰涎を化し、盗汗をおさめ、泄瀉をとめ、鬱気を開き、腹痛を療し、胸膈を利し、煩渇を解し、寒熱を散じ、体疼(たいとう:身体の痛み)を去る、甚だしく奇効あり。」

条文(現代語訳)

「婦人の様々な虚状、五臓の疲労や不摂生で身体にダメージが入り、気血の流れが悪くなり、身体がやせ衰えるのを治します。この薬はもっぱら生理を調え、血脈を滋し、虚労を補い、元気を助け、脾胃を健やかにし、心肺を養い、のどを潤し、頭をさっぱりとし、精神を安定させ、身体の熱を退け、骨が脆くなるのを除き、咳を止め、去痰し、汗を止め、下痢を止め、鬱気を流し、腹痛を治し、胸を開き、上半身の燥熱を除き、寒熱を散じ、体の痛みを去る、よく効く薬です。」

解説

今回は、滋陰至宝湯の処方解説になります。この処方は、一般的に女性の咳や痰に使われています。

しかし、あまり有名な処方ではありませんので、どちらかと言うと漢方専門の先生が使われているようなイメージです。

それでは、まずは条文を見ていきます。

条文は非常に長く書かれていますが、ざっくりと要約しますと「婦人の不摂生や疲労による数々の虚状に使用できる処方。」という意味になります。

この様な書かれ方は、婦人病の代表的な処方である加味逍遥散に近いものを感じます。

次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、グループ分けしますと

理気:香附子、薄荷、陳皮

疎肝:柴胡

補血:芍薬、当帰

潤肺・肺の清熱:麦門冬、貝母

利水:白朮、茯苓

健脾:陳皮、白朮

腎熱、肺の伏火を清す:知母、地骨皮

諸薬の緩和:甘草

の様になります。非常に多岐に渡る効果がありますが、ポイントは肺の燥熱の存在、肝熱がある事、補血を行うという事に絞られます。

構成生薬から見ますと、加味逍遥散+麦門冬の様な構成と言えます。ポイントは、人参や乾姜等の補気、補陽の生薬が含まれていない所です。

つまり、食欲はあり、身体の冷えもそれほど無いものが適応となります。

条文と併せて考えますと、滋陰至宝湯は「さほど脾胃が弱くなく冷えていないが、ストレスが溜まっている女性の肺の燥熱に使用する。加味逍遥散+肺の燥熱。」と言えます。

加味逍遥散に近い処方になりますので、不定愁訴等も出てきます。恐らく、その様な患者さんに非常によく効いたので、条文はああいう書き方になっているのだと思われます。

本処方は、裏寒や脾虚には不適ですので、注意が必要です。

鑑別

滋陰至宝湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに加味逍遥散、滋陰降火湯、加味帰脾湯があります。それぞれについて解説していきます。

加味逍遥散

滋陰至宝湯と加味逍遥散はほぼ同じ所見であり、鑑別対象となります。

両者共に肝鬱所見があり、血虚も存在します。ただ一つの違いは肺の燥熱があるかどうかになります。

加味逍遥散の様な不定愁訴があり、咳や唇の粘膜の乾燥等があれば滋陰至宝湯の場である事があります。両者共に食欲には問題が無いのが特徴です。

滋陰降火湯

滋陰至宝湯と滋陰降火湯は所見が似ている為、鑑別対象となります。

両者共に当帰が入り、また麦門冬や知母と言った肺の燥熱を清する生薬が入っています。

この二者の違いは、柴胡の有無と肺陰虚の証の強度です。滋陰至宝湯には柴胡が入りますので、目つきが鋭く肝鬱所見の胸脇苦満があります。

滋陰降火湯には柴胡が入らず、その代りに地黄が配されております。ですので、肝鬱所見は無く、より上半身の熱状が酷いものが対象となります。

両者はその部分で鑑別が可能となります。

加味帰脾湯

滋陰至宝湯と加味帰脾湯は所見が似ており、鑑別対象となります。

加味帰脾湯証は、滋陰至宝湯証や加味逍遥散証よりもほっそりとしていて、脾胃の虚があるのが特徴となります。

また、目つきは鋭い事が多く、また、帰脾湯証も隠れていますので深く考えていない発言が多く出てきます。

しかし、滋陰至宝湯の様な肺の燥熱はありませんので咳は出ません。その辺りで鑑別が可能となります。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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