ポイント この記事では、五積散についての次の事が解ります。 ・患者さんへの説明方法、副作用や注意点 ・出典(条文)、生薬構成 ・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、五積散についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、五積散という漢方薬が出ています。五積というのは、色々な毒が身体に溜まっている状態を表現していて、それらの毒を取るという効果がこのお薬にはあります。
今日はどうされましたか?
〇〇という症状ですね。先生は、このお薬が合うと判断されたようです。身体の巡りをよくするデトックスの薬ですので、一度お試し下さい。
食欲が無くなったり、身体が冷えて来ると効果が悪くなりますので、体調管理に気をつけて下さい。
漢方医処方の場合の説明
今日は、五積散という漢方薬が出ています。五積というのは、色々な毒が身体に溜まっている状態を表現していて、それらの毒を取るという効果がこのお薬にはあります。
よく肥満のお薬として防風通聖散という漢方がありますが、そのお薬より少しだけ身体が弱い方にも使えます。
今日はどうされましたか?
〇〇という症状ですね。先生は、このお薬が合うと判断されたようです。胃の調子も整えて、身体の血の巡りを良くするといった効果もありますので、一度お試し下さい。
食欲が無くなったり、身体が冷えて来ると効果が悪くなりますので、体調管理に気をつけて下さい。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシーショック
偽アルドステロン症
過敏症(発疹、発赤、そう痒等)
自律神経系(不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身脱力感、精神興奮等)
消化器(食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢等)
添付文書(ツムラ63番)
五積散についての漢方医学的説明
生薬構成
蒼朮3、陳皮2、当帰2、半夏2、茯苓2、甘草1、桔梗1、枳実1、桂皮1、厚朴1、芍薬1、生姜1、川芎1、大棗1、白芷1、麻黄1
出典
和剤局方
条文(書き下し)
「中(ちゅう)を調え、気を順(めぐ)らし、風冷を除き、痰飲を化す。脾胃宿冷、腹脇脹痛(ふくきょうちょうつう)、 胸膈停痰(きょうかくていたん)、嘔逆悪心(おうぎゃくおしん)、或は外風寒に感じ、内生冷に傷(やぶ)られ、心腹痞悶(しんぷくひもん)、頭目昏痛(とうもくこんつう)、肩背拘急(けんはいこうきゅう)、肢体怠惰(したいたいじょう)、寒熱往来、飲食進まざるを治す。及び婦人 血気調はず、心腹撮痛(しんぷくさっつう)、経候(けいこう)ひとしからず 、或は閉じて通ぜず、並に宜しく之を服すべし」
条文(現代語訳)
「中焦(ちゅうしょう:お腹)を調え、気をめぐらし、風冷を除き、痰飲を除きます。脾胃の冷え、わき腹が張って痛い、 胸に痰があり、気持ち悪くなり吐き気がし、或は外から風寒の邪に傷(やぶ)られ、体内の冷えに傷られ、上腹部が痞(つか)えて苦しい、頭や目がくらくらと痛み、肩や背中が張り、身体が動かせず、熱が出たり引っ込んだりし、食欲が無いものを治す。及び女性の血の道症で、上腹部がつまむように痛み、月経不順があるか無月経なもの、大体これを飲めばよい。」
解説
今回は、五積散の解説です。まず、この処方の名前からお話します。
五積散の五積というのは、「気、血、飲、食、痰」を指します。これら五つの毒が溜まって積もりに積もったものを治す、という意味の処方です。
漢方をよく解っている方はご存じの処方ですが、一般的にはそれほど知名度はありません。それでは、条文を見ていきます。
条文は、和剤局方からになります。かなり長く書いてありますが、要点を抜き出しますと「脾胃を整え、内外の寒冷の邪を除き、血の流れを良くし、痰を除く。」となります。
次に、構成生薬を見ていきます。五積散の構成生薬は、以下の様に分類されます。
健脾(食積を除く、理気、利水、去痰):蒼朮、陳皮、半夏、枳実、厚朴、生姜
利水、去痰:半夏、茯苓
補血:当帰、芍薬、川芎
解表、気を巡らす:桂皮、麻黄
祛風:白芷
排膿:桔梗
緩和、分散:甘草、大棗
非常に生薬が多いのですが、基本的には「気血水を巡らし、脾胃の詰まりを取って動きを良くし、祛風・排膿で毒を去る。」という身体の掃除の薬になります。
防風通聖散の虚の方剤と言えます(後で防風通聖散との鑑別もご説明します)。
ポイントは厚朴という生薬で、「脾胃を温めますが胃の詰まりを取る。」という瀉剤に分類される特徴があります。
厚朴証の方は、固い顔つきで、我が強い、食欲過多という傾向がありますが、条文の「食欲が無い」というのは「胃が詰まって食欲が出ないもの」という注釈が尽きます。
以上をまとめますと、五積散は「厚朴証の所見(脾胃の詰まり)があり、気血水が巡らず、身体全体に痰や膿等の毒が溜まっているもの。」となります。
本処方は捕脾・補気の構成ではありませんので、この処方は裏寒・脾虚が存在する場合は不適となり、注意が必要です。
鑑別
五積散と他処方との鑑別ですが、代表的なものに防風通聖散があります。この処方と五積散との鑑別を書いて行きます。
防風通聖散
防風通聖散は、森道伯先生が始められた一貫堂医学の「臓毒証体質」に使われる処方として有名です。ですが、五積散も森道伯先生が良く使われた処方です。
処方解析をした私の推測ですが、この五積散という処方は、構成生薬こそ違いますが非常に処方意図が防風通聖散と似ています。
丁度「防風通聖散の虚の処方」と考えると、腑に落ちます。名前の通り、五積というのは「気、血、飲、食、痰」が降り積もった状態になります。
その状態を改善するという事=身体の掃除の薬と言えますので、丁度、防風通聖散と効果がバッティングします。
その防風通聖散との違いですが、防風通聖散のポイントとしては石膏や滑石、大黄などの裏熱実の生薬が入っているという事です。
逆に、五積散は厚朴という胃を温める薬が入っていますので、その差が鑑別ポイントになります。
防風通聖散は、目が充血し、うわ言を言い、便秘や痔等もありますので、裏熱が非常に激しい状態の処方になります。
逆に五積散は、冷えが目立ち、防風通聖散のようなうわ言や便秘、目の充血等はありません。しかし、毒が溜まって動かないものが目標になります。
ですので、裏寒や脾胃の虚が無く、身体の熱も無い状態で、「気、血、飲、食、痰」等の毒を取って身体の掃除をしたいなあ、という場合に五積散が適応となります。
また、同様の状態で、熱所見が酷ければ防風通聖散が適応となります。
【漢方:62番】防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)の効果や副作用の解りやすい説明
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お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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