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桂枝湯類解説①からの続きです
桂枝湯類解説①
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桂枝湯類の種類②
十全大補湯、人参養栄湯、八味地黄丸、牛車腎気丸、五苓散、胃苓湯、桂枝加厚朴杏仁湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、安中散、桂枝人参湯、温経湯、桂枝茯苓丸(加薏苡仁)、葛根湯、麻黄湯、桂枝加芍薬大黄湯、桂枝加竜骨牡蠣湯、連珠飲
十全大補湯
構成生薬:当帰、芍薬、川芎、地黄、人参、蒼朮、茯苓、甘草、桂皮、黄耆
当帰・・・血を温め心血を養う
芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う
川芎・・・血を走り散らす
地黄・・・血を補い、血熱を冷ます
人参・・・脾胃の補気を行う
蒼朮・・・脾胃の湿を去る
茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
桂皮・・・表を補い経を巡らす
黄耆・・・脾から気を肺に導き、肺気を高めて表の水を逐い、皮膚粘膜を修復する
*補脾をして気力をつける四君子湯、血熱を冷まし補血の効のある四物湯の合方に黄耆と桂皮を足して、表に薬能を導いて補する処方です。四物湯の中の川芎は、血中の気剤と呼ばれ、血液の留滞を去る効があります。病中病後に使用するとありますが、現代は、元気な方が少し疲れた時に飲む処方として重宝されます。
人参養栄湯
構成生薬:当帰、芍薬、川芎、地黄、人参、蒼朮、茯苓、甘草、桂皮、黄耆、遠志、陳皮、五味子
当帰・・・血を温め心血を養う
芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う
地黄・・・血を補い、血熱を冷ます
人参・・・脾胃の補気を行う
蒼朮・・・脾胃の湿を去る
茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
桂皮・・・表を補い経を巡らす
黄耆・・・脾から気を肺に導き、肺気を高めて表の水を逐い、皮膚粘膜を修復する
遠志・・・腎の水中の気を強め、これを上達させる。下気を固くし、心腎の気を交通させ、健忘、驚悸を治す
陳皮・・・脾胃の気を動かし、巡らす
五味子・・・肺気を收めて守り、養う
*十全大補湯から血を巡らす川芎を外し、代わりに陳皮、五味子、遠志を入れた処方です。気血両虚症ですが、帰脾湯のように心血虚があり、精神不安、不眠、健忘等の症状が出ているものに使います。帰脾湯から変方する事が多い処方と言えます。。
八味地黄丸
構成生薬:地黄、山茱萸、山薬、茯苓、牡丹皮、沢瀉、桂皮、附子
地黄・・・血を補い、血熱を冷ます
山茱萸・・・腎気を補い精を渋らせる。腎を温補する。
山薬・・・肺及び脾胃を補い、腎の精気と気とを助ける
茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する
牡丹皮・・・瘀血を消し、血熱を涼し、結気を巡らせる
沢瀉・・・腎臓、膀胱に入って、水道を通じ、三焦に停滞した水を逐う
桂皮・・・表を補い経を巡らす
附子・・・腎を温補し、身体の新陳代謝を高める
*腎を補い、瘀血(腎の虚熱)、水毒を取り去って気を全身に巡らします。老化防止の剤です。地黄を含む為、脾胃が丈夫でないと使用できません。
牛車腎気丸
構成生薬:地黄、山茱萸、山薬、茯苓、牡丹皮、沢瀉、桂皮、附子、牛膝、車前子
地黄・・・血を補い、血熱を冷ます
山茱萸・・・腎気を補い精を渋らせる。腎を温補する。
山薬・・・肺及び脾胃を補い、腎の精気と気とを助ける
茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する
牡丹皮・・・瘀血を消し、血熱を涼し、結気を巡らせる
沢瀉・・・腎臓、膀胱に入って、水道を通じ、三焦に停滞した水を逐う
桂皮・・・表を補い経を巡らす
附子・・・腎を温補し、身体の新陳代謝を高める
牛膝・・・下枝の寒湿を去り、肝腎の気を補充して筋骨を盛んにして瘀血を去る
車前子・・・気を下さず、水道を通じる
*八味地黄丸に牛膝、車前子を加え、下枝の寒湿を取って下焦をより充実させる処方となります。八味地黄丸証で、腰痛、足の痺れ、尿の異常、下枝の冷えや関節痛等が存在するものに使用します。
五苓散
構成生薬:沢瀉、蒼朮、猪苓、茯苓、桂皮
沢瀉・・・腎臓、膀胱に入って、水道を通じ、三焦に停滞した水を逐う
蒼朮・・・脾胃の湿を去る
猪苓・・・腎膀胱に入り、小便を利せさせ、濕を除く
茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する
桂皮・・・表を補い経を巡らす
*太陽膀胱経が通じず、身体に水毒が溜まり浮腫を来たした状態に使います。のどが渇き水を飲みたがるが吐き戻すものが適応となります。太陽膀胱経が通じないという事は、頭痛や熱の存在も場合によってはあります。
胃苓湯
構成生薬:蒼朮、厚朴、陳皮、大棗、甘草、生姜、茯苓、白朮、沢瀉、桂皮、猪苓
蒼朮・・・脾胃の湿を去る
厚朴・・・胃の実滞を除去し、胃を賦活して暖め、気を下降させる
陳皮・・・脾胃の気を動かし、巡らす
大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
生姜・・・脾胃を温め、気を発散させる
茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する
白朮・・・脾胃の湿を取り、脾を健やかにし益気する
沢瀉・・・水道を通利し、上焦の湿を除く
桂皮・・・裏で出来たエネルギーを表に持ち出して表虚を去り、経を巡らす
猪苓・・・小便を利せさせ、下焦の湿を除く
*平胃散証かつ、水毒が存在するものに使用します。平胃散に五苓散が合方されています。飲みすぎ食べすぎで胃が詰まっており、尿が少なく、時に吐き下し、のどが渇き水を飲み、上焦に熱状(頭痛、肩こり、のぼせ)のあるものが適応になります。
桂枝加厚朴杏仁湯
構成生薬:桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草、厚朴、杏仁
桂皮・・・表を補い経を巡らす
芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す
生姜・・・脾胃の補気を行う
厚朴・・・胃の実滞を除去し、胃を賦活して暖め、気を下降させる
杏仁・・・肺を潤し温め、気を下降させ、肺の結気を散らす
*桂枝湯に厚朴と杏仁を追加した処方です。表虚で発熱微発汗し、喉の詰まり、咳痰があるものに使用します。裏寒が無く、脾胃の気が虚してない事が条件となります。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯
構成生薬:桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草、当帰、木通、呉茱萸、細辛
桂皮・・・表を補い経を巡らす
芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う
生姜・・・脾胃の補気を行う
大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
当帰・・・血を温め心血を養う
木通・・・気血を通じ、小便を利す。湿熱を泄し、火熱を導き下す
呉茱萸・・・脾胃を温めて湿を去り、気を下す
細辛・・・頭痛脳動、風寒湿を去り、九竅を利す。気を下し、痰を破り、中焦を暖め、水を去り、汗を出し、血を巡らす。咳嗽を治し、胸中の滞結を開き、百節を通じる。
*厥陰病の代表的な処方です。厥陰病とは、陰病の少陽病期に当たり、半表半裏に邪が入り込み、上下の疎通が出来なくなって熱の偏在が起こり、上熱下寒の症を呈する状態です。当帰四逆加呉茱萸生姜湯証は、熱の通達不全が起こっており、手掌は温かいが指先が冷えており、時によって霜焼けやあかぎれを生じる事があります。逆に頭は逆上せて頭痛や肩こり、首筋の凝り等が起こります。本処方は、呉茱萸で胃の寒湿を除き、木通と細辛で上下の通達を改善させて、方剤内の桂枝湯で気を巡らします。冷え逆上せ、上熱下寒、霜焼け、胼、肩こり、頭痛、首筋の凝り等に主に使われます。冬場、若い女性に使われることが多い処方です。
安中散
構成生薬:桂皮、延胡索、牡蠣、茴香、甘草、縮砂、良姜
桂皮・・・表を補い経を巡らす
延胡索・・・血を破り、諸々の血病を治す。結滞の気を利し、経絡中の血滞を通じる。
牡蠣・・・少陰腎経に入り、精血津液の分かれに走り、堅きを軟らかくさせ、精を固渋し、留熱を清する
茴香・・・膀胱と胃の間の冷気を去る。小腸の疝気、頹疝、陰疼を治す。胃を開き、気を下し、腹痛を止め、嘔吐を治し、乾湿の脚気を治す。(仙痛とは中焦の腹痛の事である)
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
縮砂・・・胃の気を温化し、胃口を開き、中焦の結気を順和し、その気を丹田に運ぶ
良姜・・・胃を温めて寒を散じ、気逆を治し、酒毒を治す
*胃を温め、瘀血を去る事で中焦の気を下します。主に、知らずに食べ過ぎている女性の胃痛や腰痛(仙痛)、駆瘀血を目標に使用します。安中散証の方は胃経や口の周りが赤い方が多く、酒さもこの方剤で改善することがあります。きゅう帰調血飲の手前、一つ軽い処方としての位置付けになります。
桂枝人参湯
構成生薬:桂皮、人参、乾姜、蒼朮、甘草
桂皮・・・表を補い経を巡らす
人参・・・脾胃の気を補い、五臓の気を補う
乾姜・・・脾胃を温める。生姜のように発散の効は少なく、裏を温めるのに適している。
蒼朮・・・脾胃の湿を除き、益気する
甘草・・・補脾。また、生体反応を緩め、解毒する。
*人参湯で表を補う元気を作り、それを桂皮で持ち出す処方です。桂皮が入ると、人参湯の効が表に向かいます。胃腸が弱い者で首筋や肩が凝るものに使用します。
温経湯
構成生薬:麦門冬、半夏、当帰、甘草、桂皮、芍薬、川きゅう、人参、牡丹皮、呉茱萸、生姜、阿膠
麦門冬・・・肺の陰を補う事で、心肺の熱燥を去る
半夏・・・脾胃の痰を去り、気を落とす
当帰・・・血を温め心血を養う
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
桂皮・・・表を補い経を巡らす
芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う
川芎・・・血を走り散らす
人参・・・脾胃の補気を行う
牡丹皮・・・瘀血を消し、血熱を涼し、血気を巡らせる
呉茱萸・・・脾胃を温めて湿を去り、気を下す
生姜・・・脾胃を温め、気を発散させる
阿膠・・・血を和(混和)し、滋陰する
*下腹部に瘀血があり、肺が乾き、経が冷えて気血が巡らず上盛下虚のものが適応になります。「虚証の桂枝茯苓丸」と言えます。桂枝ののぼせ、手荒れ、唇の荒れ、ずんぐりむっくりした体つきが特徴。
桂枝茯苓丸(加薏苡仁)
構成生薬:桂皮、桃仁、芍薬、茯苓、牡丹皮(、薏苡仁)
桂皮・・・裏で出来たエネルギーを表に持ち出して表虚を去り、経を巡らす
桃仁・・・肝経血分に入り、留滞した血液を巡らせる。また、大腸を潤させる
芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。微寒で、水を逐う
茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する
牡丹皮・・・瘀血を消し、血熱を涼し、結気を巡らせる
(薏苡仁・・・胃経の湿熱を捌き、気を下す。肌肉部の湿熱を去る。)
*下腹部をはじめとする下焦の瘀血で、桂皮が要るようなほほが桜色に上気せ、筋肉が硬くて肩が凝る方が適応です。冷えが無く、脾胃が強くてがっちりとした体質の、ずんぐりむっくりな方によく合います。子宮筋腫、更年期障害等に応用されます。薏苡仁を加えると、肌肉部の湿熱も捌く為、胃の湿熱が存在したり、腫瘤になっている場合に用いられます。
葛根湯
構成生薬:葛根、大棗、麻黄、甘草、桂皮、芍薬、生姜
葛根・・・胃熱を解き、口渇を止め、酒毒を消し、肌熱を解きて、汗を発する。
大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す
麻黄・・・太陰肺経、足の太陽膀胱経に入り、風寒の邪気が表に閉じて居る患者への発表解表剤として用いられる
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
桂皮・・・表を補い経を巡らす
芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う
生姜・・・脾胃を温め、気を発散させる
*桂枝湯に葛根と麻黄が足されている処方です。麻黄は主に太陽膀胱経の寒邪を去り、腠理を開いて汗を出させます。詰まりを強烈に取るので、脾胃のエネルギーを激しく消耗してしまう為、注意を要します。冷え、脾胃に弱りが無く、強烈な肩こり頭痛がある、風邪の初期で発熱しかかっているタイミング(高熱になろうとして上がっている状態)に使用します。
麻黄湯
構成生薬:麻黄、杏仁、桂皮、甘草
麻黄・・・太陰肺経、足の太陽膀胱経に入り、風寒の邪気が表に閉じて居る患者への発表解表剤として用いられる
杏仁・・・肺を潤し温め、気を下降させ、肺の結気を散らす
桂皮・・・表を補い経を巡らす
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
*表に強力な寒邪が侵入し、経を犯したものを治します。経が止められる為、邪を発散させようと発熱し、肺は結気します。表に気の詰まりが生じる為、肺のすぐ下に骨があり、痛みを感じやすい節々に痛みを生じます。頓服で使用するのが望ましい処方。
桂枝加芍薬湯
構成生薬:桂皮、芍薬、甘草、大棗、生姜、大黄
桂皮・・・表を補い経を巡らす
芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す
生姜・・・脾胃の補気を行う
大黄・・・処々の実熱して不通な箇所を瀉し、瘀血を破り下す。下焦の湿熱を除く
*桂枝湯の芍薬を増量した桂枝加芍薬湯に、大黄を加えた処方。芍薬は碇の役割を持ち薬能を内部に引き込む作用を持ち、肝陰を補って消化管外の裏急(腹痛、仙痛等)を和らげる効に、下腹部の瘀血を下す大黄を加えたもの。桂枝加芍薬湯に瘀血所見が加わった状態に使う。
桂枝加竜骨牡蠣湯
構成生薬:桂皮、芍薬、甘草、大棗、生姜、竜骨、牡蠣
桂皮・・・表を補い経を巡らす
芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す
生姜・・・脾胃の補気を行う
竜骨・・・精の漏下を防ぎ、遺精を止め、精を伴って出でるものを渋らせる
牡蠣・・・少陰腎経に入り、精血津液の分かれに走り、堅きを軟らかくさせ、精を固渋し、留熱を清する
*桂枝湯に竜骨と牡蠣を加えた処方です。竜骨牡蠣が入る事で、精が漏れ出るのを防ぎ、邪熱を去って精神を落ち着かせて気を巡らします。陰部湿疹や、遺精、脱毛、フケ症等に主に使用されます。腎陰の虚損に使用すると考えると、小建中湯の、肝陰虚が進行してもっと酷い状態になっているとも言えます。精が不安定な10代によく使われる処方です。
連珠飲
構成生薬:茯苓、桂皮、蒼朮、甘草、当帰、芍薬、川芎、地黄
茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する
桂皮・・・表を補い経を巡らす
蒼朮・・・脾胃の湿を去る
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
当帰・・・血を温め心血を養う
芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う
川芎・・・血を走り散らす
地黄・・・血を補い、血熱を冷ます
*苓桂朮甘湯と四物湯の合方。胃内停水があり、血虚があるもの。すなわち、めまい、ふらつき、のぼせ等があり肩が凝っていて、下焦が痩せ衰えて皮膚の色艶が悪いものが目標となります。四物湯が胃腸に重いので、四物湯の量を加減しながら使用します
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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