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桂枝湯類解説①

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桂枝湯類の特徴

ムセキ
「百薬を推動する。」と言われます。桂枝は、諸薬の効果を表に持っていく効果があります。

各所の解説項目と被る所が多いのですが、桂枝湯類の解説を行います(文字数が多いので2つに分けます)。

桂枝湯類は、文字通り桂枝が配合され、裏から表へエネルギーを持ち出す方剤です。従って、ある程度裏寒や脾胃の虚が治まっている必要があります。

もし、裏寒や脾胃の虚が甚だしい場合にこれを使うと、反ってそれらを悪化させてしまう事があります(壊病)。

しかし、気が巡らない事により上半身に気が溜まってしまうと、頭痛、ふらつき、肩こり、めまい、頭重感、首筋の凝り、逆上せなど、様々な症状を呈する為、適切に使用して経を巡らす必要があります。

方剤には「桂枝湯」などと銘打たれていますが、実際には桂枝ではなく桂皮が使われています(桂枝は非医薬品であり、薬価収載されていない為)。

その為、桂枝=桂皮とみなしますが、実際には薬能が違う為、使い分けをした方が良いと思われます。

桂皮・・・少陰腎経、太陰脾経に入り、下焦命門の火虚を温補し、最終的に表に気を持ち出す

桂枝・・・手の太陰肺経に行き皮膚に達する。且つ、足の太陽経に入り、衛中の邪を逐う

また、桂枝が配合されている薬方とそうでない薬方では、決定的に効果を及ぼす部位が違ってきます。

桂枝が配合されている場合は、その効が裏からエネルギーを持ち出して表を補うのに対し、配合されていない場合は裏を補うのみです。

そういった意味で、桂枝というのは、薬方の方向性を決定する重要な因子であると言えます。

桂枝を使う上で気を付けるべき点のうち最も重要なものは、使用を誤ると裏寒に陥ってしまう可能性があるという事です。

裏寒に陥った場合は、甘草乾姜湯に代表される温裏剤を適切に用いて、これを回復する必要があります。

次項より、桂枝湯類の代表例を順に取り上げます。

桂枝湯類の種類①

ムセキ
よく使う桂枝湯類をご紹介します。

桂枝湯、桂枝加附子湯、桂枝加朮附湯、桂枝加苓朮附湯、苓桂朮甘湯、苓桂甘棗湯、桂枝加芍薬湯、小建中湯、黄耆建中湯、当帰建中湯、帰耆建中湯

桂枝湯

構成生薬:桂皮、芍薬、甘草、大棗、生姜

桂皮・・・表を補い経を巡らす

芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う

甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する

大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す

生姜・・・脾胃の補気を行う

*衆方の祖(あらゆる漢方方剤の祖先)と言われ、最も完成された方剤と言われています。風邪により衛気が虚損して表虚を呈し、発熱し腠理が狂って汗が止まらないものに使用します。桂枝で表虚を補い、結果、腠理を改善され完治させますが、その他の芍薬で陰の虚損を防ぎ、甘草大棗で補脾して表への気の供給を助け、また、大棗で陰陽バランスを整え、生姜でそれらの働きを一括して応援しています。裏寒、脾虚の状態ではこの方剤は禁忌です。また、邪が内に入り込んだ場合についても無効となります。

桂枝加附子湯

構成生薬:桂皮、芍薬、甘草、大棗、生姜、附子

桂皮・・・表を補い経を巡らす

芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う

甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する

大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す

生姜・・・脾胃の補気を行う

附子・・・腎を温補し、身体の新陳代謝を高める

*桂枝湯証(表虚証)で、汗が漏れ出るものに使用します。桂枝湯に附子を足した方剤で、附子で腎陽を補い、より深い部分から表虚を逐うことが出来ます。普段から動かない、中年男性の生活習慣病の改善にも使用します。手を触ると表面が冷たく、汗で濡れている場合がよくあります。

桂枝加朮附湯

構成生薬:桂皮、芍薬、甘草、大棗、生姜、蒼朮、附子

桂皮・・・表を補い経を巡らす

芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う

甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する

大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す

生姜・・・脾胃の補気を行う

蒼朮・・・脾胃の湿を去る

附子・・・腎を温補し、身体の新陳代謝を高める

*桂枝湯に朮と附子を足した処方です。関節等に湿が溜まり、冷えて痛むもの。応用として、身体の水毒を除くのに使用する場合もあります。

桂枝加苓朮附湯

構成生薬:桂皮、芍薬、甘草、大棗、生姜、茯苓、蒼朮、附子

桂皮・・・表を補い経を巡らす

芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う

甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する

大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す

生姜・・・脾胃の補気を行う

茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する

朮・・・脾胃の湿を去る

附子・・・腎を温補し、身体の新陳代謝を高める

*桂枝加朮附湯に茯苓を足した処方です。回水効果が追加され、上焦の逆上せ、利水を強化し、身体からの水毒を尿として排出させます。

苓桂朮甘湯

構成生薬:茯苓、桂皮、蒼朮、甘草

茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する

桂皮・・・表を補い経を巡らす

蒼朮・・・脾胃の湿を去る

甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する

*胃内停水があり、ほほが赤みをさしてのぼせ、ふらつきやめまいがあるものに使います。胃の上を叩くと、チャポチャポと音がします。この方剤で身体がしっかりして来ると、小建中湯等に移行する場合があります。若しくは、のぼせが落ち着いた場合に、真武湯のみで冷えを改善させるのみとする事もあります。

苓桂甘棗湯

構成生薬:茯苓、桂皮、甘草、大棗

茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する

桂皮・・・表を補い経を巡らす

甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する

大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す

*甘麦大棗湯と苓桂朮甘湯の合方に近い処方です。甘麦大棗湯証より、気の上行が強く、時に過呼吸、過緊張などの症状を呈するものに使用します。胃内停水も存在します。

桂枝加芍薬湯

構成生薬:桂皮、芍薬、甘草、大棗、生姜

桂皮・・・表を補い経を巡らす

芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う

甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する

大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す

生姜・・・脾胃の補気を行う

*桂枝湯の芍薬を増量した処方です。また、膠飴が入るか入らないかが小建中湯との違いとなります。芍薬は碇の役割を持ち薬能を内部に引き込む作用を持ち、肝陰を補って消化管外の裏急(腹痛、仙痛等)を和らげます。補脾効果は期待できないので、むやみに使用し続けると脾虚を起こす可能性があります。

小建中湯

構成生薬:桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草、膠飴

桂皮・・・表を補い経を巡らす

芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う

甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する

大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す

生姜・・・脾胃の補気を行う

膠飴・・・渇きを止め、悪血を去り、気を益し、肺を潤し、脾を健やかにし、胃の痰を消し、咳や喉痛を止め、附毒を解し、薬を和す。麦芽糖を多量に含む。

*裏虚(虚労)と呼ばれる状態に使用される方剤の代表処方です。動きすぎて疲れ、陰を消耗するがために逆上せ、肩こり等の症状を呈するものに使用します。桂枝加芍薬湯と小建中湯の違いは膠飴一味だけです。膠飴は米などの粉に麦芽(ばくが)を混ぜて糖化させ、それを煮詰めて固めたものです。胃の陰を補い、腸内細菌叢を整えて脾を健やかにし、栄衛の気血を補充し、脾胃や心を保護します。また、緩和の効があります。膠飴は、人参のように脾胃そのものの動きを改善させる「補気」とは違い、気の元となる陰(材料)を提供して脾胃の力を受けて気を全身に巡らせます。また、それと同時に脾胃の環境を整え、その働きを守る効があります。その為、全身の気虚が改善され、虚労を治します。アトピーや欝症状等においても、脾胃で作られる気が不足する事で、それぞれの臓腑においての気虚が発生する事が多くあります。膠飴そのものが「建中」の中核を担っていると言えます。

黄耆建中湯

構成生薬:桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草、膠飴、黄耆

桂皮・・・表を補い経を巡らす

芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う

甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する

大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す

生姜・・・脾胃の補気を行う

膠飴・・・渇きを止め、悪血を去り、気を益し、肺を潤し、脾を健やかにし、胃の痰を消し、咳や喉痛を止め、附毒を解し、薬を和す。麦芽糖を多量に含む。

黄耆・・・脾から気を肺に導き、肺気を高めて表の水を逐い、皮膚粘膜を修復する

*脾胃でエネルギーを作って、その気を肺に導き肺気を高める処方です。肺気が密になるので、表の水を逐って内部に引き込み、掻傷面の回復を早めます。多汗症、アトピー等に使用します。また、粘膜上皮の異常等にも応用でき、無菌性膀胱炎の治療等にも使用できます。

当帰建中湯

構成生薬:当帰、桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草

当帰・・・血を温め心血を養う

桂皮・・・表を補い経を巡らす

芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う

生姜・・・脾胃を温め、気を発散させる

大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す

甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する

*小建中湯から膠飴を去り、当帰を加えた処方です。血を潤わせて温め、巡らせます。現代の女性の基本薬。虚労で腹直筋の緊張がある、少し神経の細かい皮膚の色艶の悪い女性によく使用されます。虚労の程度が酷いものには膠飴を入れるとなってい、原典では入っていたものと思われます。

帰耆建中湯

構成生薬:桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草、膠飴、当帰、黄耆

桂皮・・・表を補い経を巡らす

芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う

甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する

大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す

生姜・・・脾胃の補気を行う

膠飴・・・渇きを止め、悪血を去り、気を益し、肺を潤し、脾を健やかにし、胃の痰を消し、咳や喉痛を止め、附毒を解し、薬を和す。麦芽糖を多量に含む。

黄耆・・・脾から気を肺に導き、肺気を高めて表の水を逐い、皮膚粘膜を修復する

当帰・・・血を温め心血を養う

*華岡青州作方で、十全大補湯の一歩手前の処方です。裏虚を解除し、黄耆で肺気を、当帰で心の血を補う気血両補剤です。アトピーや喘息等に長服させることもあります。色艶が悪く、働きすぎ動きすぎで疲れて動悸がするものに使用されます。

桂枝湯類解説②へ続きます。

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ムセキ
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