名古屋を中心とする東海地方の漢方医学と、それに基づいた健康・美容情報等をご紹介します。

名古屋漢方

過去漢方資料(方剤・生薬)

補腎剤の特徴

更新日:

スポンサーリンク

補腎剤の特徴

ムセキ
地黄が入っていても、その組み合わせで補腎剤、補血剤、気血両補剤と分かれます。

補腎剤は共に地黄が主剤であり、腎を補う効が強く、身体の陰を補って身体の肉体組織を作っていく薬方です。

部位や補う陰の形態やバランスにより、腎虚、腎精の不足等、様々な表現がされます。

臨床上では、腰から下が痩せ衰えたり、腰痛、関節痛、白髪や骨粗しょう症の改善や耳鳴、かすみ目などの老化防止として使用されます。

基本的に、老化に伴って腎虚は進行しますが、それは先天の精が枯渇するからです。これらの方剤は、肝腎を補う事で老化を食い止め、長寿を目指す処方とも言えます。

処方の性質上、長く服用する事が多い処方群です。補血剤との違いは、補血剤は当帰が配されて心血を補うのに対し、補腎剤は牡丹皮が配されているが為に心熱を瀉す方向に働きます。

これらの方剤は油性の生薬が多く配合されており、消化に時間がかかり胃腸に負担をかけやすくなります。また、身体の陰を補うので、裏寒や気虚を引き起こしやすいとも言えます。

その為、それらに気を付けて使用し、食生活等の指導もしっかりと行う必要があります。

補腎剤として使われる生薬には、以下の物があります。

地黄

次項より、補腎剤の代表例を順に取り上げます。

補腎剤の種類

ムセキ
身体の土台を腎精は司ります。補腎剤は、それを補います。

八味地黄丸、六味地黄丸、牛車腎気丸、知柏地黄丸、味麦地黄丸、枸菊地黄丸、大防風湯、

八味地黄丸

構成生薬:地黄、山茱萸、山薬、茯苓、牡丹皮、沢瀉、桂皮、附子

地黄・・・血を補い、血熱を冷ます

山茱萸・・・腎気を補い精を渋らせる。腎を温補する。

山薬・・・肺及び脾胃を補い、腎の精気と気とを助ける

茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する

牡丹皮・・・瘀血を消し、血熱を涼し、結気を巡らせる

沢瀉・・・腎臓、膀胱に入って、水道を通じ、三焦に停滞した水を逐う

桂皮・・・表を補い経を巡らす

附子・・・腎を温補し、身体の新陳代謝を高める

*腎を補い、瘀血、水毒を取り去って気を全身に巡らす。老化防止の剤です。脾胃が丈夫でないと使用できません。丸剤とエキス剤では、生薬を末にしているかエキス抽出しているかで成分の差異が存在します(水抽出だと脂溶性成分や繊維質が不足)。また、丸剤ではハチミツが追加されているので、九味地黄丸と別称で呼ばれる事もあります。厳密には効能は違うものと考えられます。消渇にも使用します(土克水改善)。

六味地黄丸

構成生薬:地黄、山茱萸、山薬、茯苓、牡丹皮、沢瀉

地黄・・・血を補い、血熱を冷ます

山茱萸・・・腎気を補い精を渋らせる。腎を温補する

山薬・・・肺及び脾胃を補い、腎の精気と気とを助ける

茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する

牡丹皮・・・瘀血を消し、血熱を涼し、結気を巡らせる

沢瀉・・・腎臓、膀胱に入って、水道を通じ、三焦に停滞した水を逐う

*一般的には、腎精が不足して発育不良の小児に使う処方です。腎虚が八味地黄丸ほど酷くなく、冷えていない若年性の剥げや白髪などの老化症状に使用するとされています。しかし、処方構成を見てみると、桂枝附子が入っておりません。表の気は虚しておらず、逆上せ症状はあまり無いものにも使用できると考えられます。純粋に裏の陰を補う処方とも言えるので、最終的に表を補う八味地黄丸とは結果として逆になります。八味地黄丸は表に気を持ち出すが為に、元気が出てきますが、腎精を損耗するために腎精を使い切ってしまう場合がある事も考えておく必要があります。六味地黄丸は表に気を持ち出す事は無く、腎精を損耗する事は無いが、陰を補うのに特化している分、元気がなくなり活動力が減ります。その為、八味地黄丸、六味地黄丸の使い分けには非常に微妙な線が存在すします。本処方も、八味地黄丸と同じく脾胃が丈夫でないと使用できません。

牛車腎気丸

構成生薬:地黄、山茱萸、山薬、茯苓、牡丹皮、沢瀉、桂皮、附子、牛膝、車前子

地黄・・・血を補い、血熱を冷ます

山茱萸・・・腎気を補い精を渋らせる。腎を温補する。

山薬・・・肺及び脾胃を補い、腎の精気と気とを助ける

茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する

牡丹皮・・・瘀血を消し、血熱を涼し、結気を巡らせる

沢瀉・・・腎臓、膀胱に入って、水道を通じ、三焦に停滞した水を逐う

桂皮・・・表を補い経を巡らす

附子・・・腎を温補し、身体の新陳代謝を高める

牛膝・・・下枝の寒湿を去り、肝腎の気を補充して筋骨を盛んにして瘀血を去る

車前子・・・気を下さず、水道を通じる

*八味地黄丸に牛膝、車前子を加え、下枝の寒湿を取って下焦をより充実させる処方となります。八味地黄丸証で、腰痛、足の痺れ、尿の異常、下枝の冷えや関節痛等が存在するものに使用します。八味地黄丸と六味地黄丸の間位の位置づけの処方です。

知柏地黄丸

構成生薬:地黄、山茱萸、山薬、茯苓、牡丹皮、沢瀉、知母、黄柏

地黄・・・血を補い、血熱を冷ます

山茱萸・・・腎気を補い精を渋らせる。腎を温補する。

山薬・・・肺及び脾胃を補い、腎の精気と気とを助ける

茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する

牡丹皮・・・瘀血を消し、血熱を涼し、結気を巡らせる

沢瀉・・・腎臓、膀胱に入って、水道を通じ、三焦に停滞した水を逐う

知母・・・腎熱を冷まし、腎火にて上焦肺分を薫じ生じた熱を清くする

黄柏・・・腎膀胱の熱を去り、結果、肺気を下に導く。脾胃の熱を下す

*腎虚による腎の熱が甚だしく、上に昇って心肺に熱を生じているものに使用します。老人性の高血圧や陳旧性の脳腫瘍、脳血管障害等の慢性症状にも使用する事があります。知母は髄の熱を取りますので、脳腫瘍などにも使う場合もあります。

味麦地黄丸

構成生薬:地黄、茯苓、沢瀉、山茱萸、山薬、牡丹皮、麦門冬、五味子

地黄・・・血を補い、血熱を冷ます

茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する

沢瀉・・・腎臓、膀胱に入って、水道を通じ、三焦に停滞した水を逐う

山茱萸・・・陽を補い、精血を助け、性を滑らかにして、妄りに泄さないようにする

山薬・・・肺及び脾胃の気液を補い、また、腎の精気伴に助ける

牡丹皮・・・瘀血を消し、血熱を涼し、血気を巡らせる

麦門冬・・・肺の陰を補う事で、心肺の熱燥を去る

五味子・・・肺気を收めて守り、養う

*六味丸に麦門冬と五味子が入ったもの。腎虚があり、上焦に燥熱があり心肺の働きが鈍っているもの。症状としては、声枯れ、咳等が出る。

枸菊地黄丸

構成生薬:地黄、山茱萸、山薬、茯苓、牡丹皮、沢瀉、枸杞子、菊花

地黄・・・血を補い、血熱を冷ます

山茱萸・・・腎気を補い精を渋らせる。腎を温補する。

山薬・・・肺及び脾胃を補い、腎の精気と気とを助ける

茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する

牡丹皮・・・瘀血を消し、血熱を涼し、結気を巡らせる

沢瀉・・・腎臓、膀胱に入って、水道を通じ、三焦に停滞した水を逐う

枸杞子・・・精を補い、肺を潤し、気を助け、筋骨を堅くし、虚労を補う

菊花・・・水を補い、陰を助け、火を制し、金を補ひ、木を制する。陰を補い上盛下虚を改善する事で、上焦の風熱を去る。

*六味地黄丸に枸杞子と菊花を加えた処方です。枸杞子が、腎精の虚損を治して補腎の効を高めて気を下げ、菊花で上焦の風熱を去ります。菊花は、血管拡張作用により血圧を下げる効があります。

大防風湯

構成生薬:黄耆、地黄、芍薬、蒼朮、当帰、杜仲、防風、川芎、甘草、羗活、牛膝、大棗、人参、乾姜、附子

黄耆・・・脾から気を肺に導き、肺気を高めて表の水を逐い、皮膚粘膜を修復する

地黄・・・血を補い、血熱を冷ます

芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う

蒼朮・・・脾胃の湿を去る

当帰・・・血を温め心血を養う

杜仲・・・腎精を補い、肝の燥を潤す

防風・・・上焦の風邪を治す。頭目の中に滞る気を発散し、肺実を瀉し、経絡中の留濕を去る

川芎・・・血を走り散らす

甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する

羗活・・・風を逐い、湿を除いて太陽膀胱経の滞りを去る

牛膝・・・下枝の寒湿を去り、肝腎の気を補充して筋骨を盛んにして瘀血を去る

大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す

人参・・・脾胃の補気を行う

乾姜・・・心を通し、陽気を助け、中焦下焦を温め、肺気肝血を利し、中焦下焦の寒湿を去る

附子・・・腎を温補し、身体の新陳代謝を高める

*胃腸が比較的弱く、気血両虚と腎虚を兼ねるものに使われます。当帰、川芎で活血させる。慢性関節リウマチや関節痛でも使用します。「うどの大木」のような、くびれの無い体つきの女性にも使います。羗活や防風で、上焦の風を去ります。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
他の記事も宜しくお願い致します。

以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

参考記事
目次

続きを見る

Copyright© 名古屋漢方 , 2024 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.