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建中湯類解説

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建中湯類の特徴

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望診でかなりの適合者を見つける事が出来ます。

建中湯類について、以下にご紹介します。建中湯は、太陰病の代表的方剤であり、その名の通り「中を建て直す(建中)」処方です。

中というのはお腹の事であり、中焦を指します。

建中湯を使用する状態を「虚労」「裏虚」等と言い、虚労となった場合、疲労、頬が桜色、手掌発汗、手足火照り、逆上せ、臍周辺の冷え、両腹直筋の緊張、動悸、便秘、便秘下痢の繰り返し、しぶり腹等の症状が出てきます。

体質として小建中湯が合う者は、概ね素直で緊張しやすく、センシティブな性格で身体の限界を超えて動き、急迫を起こしやすい特徴があります。

子供がそのまま素直な性格で大人になったような方で、望診で判断しやすい病態です。子供のアトピー等の体質改善にも極めて良く使用されます。

また、建中湯が非常に合う者は、体質が変わらない限り、どの様な症状でも建中湯で症状に対応することが出来ます。

膠飴

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膠飴(麦芽飴)が主剤と言えます。

建中湯の建中湯である特徴は、膠飴が入っている所にあります。桂枝湯の芍薬を増量し、桂枝加芍薬湯として、そこに膠飴を加えると小建中湯となります。

即ち、膠飴は、人参のように脾胃そのものの動きを改善させる「補気」とは違い、気の元となる陰(材料)を提供して、脾胃の力を受けて全身に気を巡らせます。

また、それと同時に脾胃の環境を整え、その働きを守る効があります。恐らく腸内細菌叢の調和を行う効もあるのではないかと思われます(和語本草の「脾を健やかにし」、という記述より)。

結果、五臓を含む全身の補気が行われて、虚労が解除されるものと考えられます。

また、膠飴が入る事で、栄養状態の改善効果が追加される為、桂枝加芍薬湯とは違い長服可能な体質改善薬として使用できます。

次項より、桂枝湯類の代表例を順に取り上げていきます。

建中湯類の種類

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小建中湯が基本処方となります。

小建中湯、黄耆建中湯、当帰建中湯、大建中湯、中建中湯、帰耆建中湯

小建中湯

構成生薬:桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草、膠飴

桂皮・・・表を補い経を巡らす

芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う

甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する

大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す

生姜・・・脾胃の補気を行う

膠飴・・・渇きを止め、悪血を去り、気を益し、肺を潤し、脾を健やかにし、胃の痰を消し、咳や喉痛を止め、附毒を解し、薬を和す。麦芽糖を多量に含む。

*裏虚(虚労)と呼ばれる状態に使用される方剤の代表処方です。動きすぎて疲れ、陰を消耗するがために逆上せ、肩こり等の症状を呈するものに使用します。桂枝加芍薬湯と小建中湯の違いは膠飴一味です。膠飴は米などの粉に麦芽(ばくが)を混ぜて糖化させ、それを煮詰めて固めたものになります。胃の陰を補い、腸内細菌叢を整えて脾を健やかにし、栄衛の気血を補充し、脾胃や心を保護します。また、緩和の効があります。脾胃の環境を整え、その働きを守る効があります。その為、全身の気虚が改善され、裏虚が改善されて栄養状態が良くなる為に虚労を治します。アトピーや欝症状等においても、脾胃で作られる気が不足する事で、それぞれの臓腑においての気虚が発生する事が多く見られます。膠飴そのものが「建中」の中核を担っていると言えます。

黄耆建中湯

構成生薬:桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草、膠飴、黄耆

桂皮・・・表を補い経を巡らす

芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う

甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する

大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す

生姜・・・脾胃の補気を行う

膠飴・・・渇きを止め、悪血を去り、気を益し、肺を潤し、脾を健やかにし、胃の痰を消し、咳や喉痛を止め、附毒を解し、薬を和す。麦芽糖を多量に含む。

黄耆・・・脾から気を肺に導き、肺気を高めて表の水を逐い、皮膚粘膜を修復する

*脾胃でエネルギーを作って、その気を肺に導き肺気を高める処方です。肺気が密になるので、表の水を逐って内部に引き込み、掻傷面の回復を早めます。多汗症、アトピー等に使用します。また、粘膜上皮の異常等にも応用できるので、無菌性膀胱炎の治療等にも使用できます。

当帰建中湯

構成生薬:当帰、桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草

当帰・・・血を温め心血を養う

桂皮・・・表を補い経を巡らす

芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う

生姜・・・脾胃を温め、気を発散させる

大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す

甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する

*小建中湯から膠飴を去り、当帰を加えた処方です。血を潤わせて温め、巡らせます。現代の女性の基本薬と言えます。虚労で腹直筋の緊張があります、少し神経の細かい皮膚の色艶の悪い女性によく使用されます。虚労の程度が酷いものには膠飴を入れるとなっていますが、原典では入っていたものと思われます

大建中湯

構成生薬:人参、乾姜、山椒、膠飴

人参・・・脾胃の補気を行う

乾姜・・・心を通し、陽気を助け、中焦下焦を温め、肺気肝血を利し、中焦下焦の寒湿を去る

山椒・・・肺に入って寒を散じ、脾に入って濕を除き、右腎に入って火を補う

膠飴・・・渇きを止め、悪血を去り、気を益し、肺を潤し、脾を健やかにし、胃の痰を消し、咳や喉痛を止め、附毒を解し、薬を和す。麦芽糖を多量に含む。

*一般的には術後の腸閉塞防止によく使われます。冷えや気虚により腸が動かず、ガス満で腹が張って便秘するものに使用します。また、肺大腸の寒を取り去り温めるとは言っても、それらの機能を賦活するという事は、最終的に気を下す作用を有します。その為、気を下し過ぎないように気を上げる処方、又は緩和の効のある甘草配合の処方で調節する方が良いと考えられます

中建中湯

構成生薬:桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草、膠飴、人参、乾姜、山椒

桂皮・・・表を補い経を巡らす

芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う

甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する

大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す

生姜・・・脾胃の補気を行う

膠飴・・・渇きを止め、悪血を去り、気を益し、肺を潤し、脾を健やかにし、胃の痰を消し、咳や喉痛を止め、附毒を解し、薬を和す。麦芽糖を多量に含む。

人参・・・脾胃の補気を行う

乾姜・・・心を通し、陽気を助け、中焦下焦を温め、肺気肝血を利し、中焦下焦の寒湿を去る

山椒・・・肺に入って寒を散じ、脾に入って濕を除き、右腎に入って火を補う

*大建中湯と小建中湯を合方したものです。。ガス満と虚労の両方が並存するものに使用します。

帰耆建中湯

構成生薬:桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草、膠飴、当帰、黄耆

桂皮・・・表を補い経を巡らす

芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う

甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する

大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す

生姜・・・脾胃の補気を行う

膠飴・・・渇きを止め、悪血を去り、気を益し、肺を潤し、脾を健やかにし、胃の痰を消し、咳や喉痛を止め、附毒を解し、薬を和す。麦芽糖を多量に含む。

黄耆・・・脾から気を肺に導き、肺気を高めて表の水を逐い、皮膚粘膜を修復する

当帰・・・血を温め心血を養う

*華岡青州作方で、十全大補湯の一歩手前の処方です。裏虚を解除し、黄耆で肺気を、当帰で心の血を補う気血両補剤です。アトピーや喘息等に長服させることもあります。色艶が悪く、働きすぎ動きすぎで疲れて動悸がするものに使用します。

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