ポイント
この記事では、葛根湯についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、葛根湯の解説記事になります。最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。
日々の業務で使う資料としてご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
メイン
今日は漢方の風邪薬が出ています。有名な薬ですのでご存じだと思いますが、葛根湯と言います。
首筋が張って頭痛があって寒気がして汗が出てなくって、という丁度熱が上がりかけの場合に使われます。
汗を出して治してしまいましょう、というお薬です。
①医師より「頓服」「調節して飲んで」と指示がある場合、自分で売る場合
元々、葛根湯は頓服で飲むように作られている薬ですので、飲んで症状が良くなったら、飲む必要がありません。
先生の指示通り、良くなったら止めてOKです。
なるべく消化の良いものを食べて下さい。お粥や雑炊が良いと思います。飲んでもあまり効果が無いようなら、首筋、頭と首の境目を揉むと良いでしょう。
また、足湯をすると冷え防止になるので、風邪を早く治せますよ。あとは、まあ、寝る事でしょうか。
②医師より数日程度処方が出ていて、何も指示が無い場合
先生の指示通り、〇日分飲むようにお願いします。薬の効果を助ける為、足湯等をして身体を冷やさないようにしてください。
なるべく消化の良いものを食べて下さい。お粥や雑炊が良いと思います。飲んでもあまり効果が無いようなら、首筋、頭と首の境目を揉むと良いでしょう。
また、足湯をすると冷え防止になるので、風邪を早く治せますよ。あとは、まあ、寝る事でしょうか。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシー
偽アルドステロン症
血圧上昇(高血圧)
胃腸障害
尿閉
便秘
動悸
冷え(裏寒)
添付文書
葛根湯についての漢方医学的説明(ツムラ1番)
生薬構成
葛根4、麻黄3、桂枝2、芍薬2、甘草2、大棗3、生姜2
出典
傷寒論、金匱要略
条文(書き下し)
「太陽病、項背こわばること几几(しゅしゅ)、汗なく、悪風(おふう)する証。」
「太陽と陽明との合病、自ら下痢する証。」
「太陽病、汗なく、小便反って少なく、気、胸に上衝し、口つぐみて語るを得ざる証。」
条文(現代語訳)
「太陽病で、首筋が固くこわばり、汗なくして、悪風(おふう)するもの。」
「太陽と陽明との合病で、自ら下痢するもの。」
「太陽病で、汗なく、小便は反って少なく、気が胸に上衝し、口つぐみて言葉が出ないもの。」
解説
葛根湯は、葛根と麻黄を無くせば、桂枝湯という基本処方になります。
葛根は陽明胃経の熱を取る薬で、首筋の肌肉を和らげます。また、麻黄は、寒邪による太陽膀胱経の首筋での詰まりを取る薬です。
首筋の詰まりを取るという事は、頭から足先までの、背面を通る膀胱経を通す為、各兪穴を活性化させます(寒気が取れる)。
後は、桂枝湯と同じ効になります(表を温め発汗させる)。
問題点として、裏寒、脾虚等身体の虚が元々存在する場合、気が枯渇して虚証に転ずる可能性がある事です。
現代人は元々虚に傾いている場合が多いので、注意が必要です。
葛根湯は頓服が基本
元々、「風邪をひいたかな?」と思った時に飲む薬と言われていますが、飲んで良い方とそうでない方に分かれます。
また、病院や薬局に行った時点で葛根湯証の時期は終わっている事が多いので、本来、風邪で病院にかかって出すような薬でもありません。
どちらかというと、常備しておいて、すぐにパッと飲んでもらうように処方構成が作られています。
ですので、風邪の頓服としての処方なら意味が通ります。
一定期間飲み続ける様に処方が出ている場合、葛根湯の誤治で冷え(裏寒)や胃腸障害(脾虚)が起こる可能性がありますので、その対処を伝えておく必要があります。
葛根湯は使いづらい
葛根湯はのどの痛みには効きませんので、「喉が痛くて葛根湯」というのは間違いです。
また、発汗していた場合は、そもそも葛根湯証ではないので使わない方が良いです。
冷え(裏寒)や胃腸障害(脾虚)にも合わない処方です(飲むと動悸がしたり、元気が逆に無くなったりします)。
ですので、葛根湯は、身体内部の熱とエネルギーを使って風寒の邪を追い出す薬ですので、それらの力がある事を確認してから使用する必要があります。
老人の風邪でよく出されていますが、私にはちゃんと診察して出したのか疑問です。
細かく言いますと、血圧の薬を何種類も飲んでいて葛根湯が出ているという、訳の分からない事が起こっています。
病院に問い合わせても、「問題ないから出すように」との返答しか貰ったことがありません。
鑑別
通常の風邪薬ですと真武湯や人参湯、附子理中湯等の温裏剤を使うのが一番無難でしょうか。
使えるなら、茯苓四逆湯、四逆加人参湯、甘草乾姜湯も使いたい所です。
夏風邪ですと、清暑益気湯や炙甘草湯等が候補に入り、胃腸風邪なら六君子湯(食欲無し)や茯苓飲合半夏厚朴湯(食欲有り)等が候補に入ります(それ以外の処方も使う場合があります)。
現実にはそこまで沢山使えない事が多いですので、あるもので対処する他ありません。
上記の薬のうち、どれかが手元にあればそれを使いますし、無いようなら、生姜湯や金柑湯、足湯、のど飴等を薦めて、早く休んで貰う事が良いと思います。
また、健康な方なら、一般用医薬品(西洋薬)で症状を聞いて対応する方が、間違いは少ないように思います。
続きを見る【漢方:30番】真武湯(しんぶとう)の効果や副作用の解りやすい説明
続きを見る【漢方:32番】人参湯(にんじんとう)の効果や副作用の解りやすい説明
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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