ポイント
この記事では、呉茱萸湯についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、呉茱萸湯の解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料としてご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、呉茱萸湯という漢方が出ています。一般的に、片頭痛の漢方薬として有名です。
この薬ですが、胃が冷えて水でベシャベシャになっていて、それが原因で片頭痛になっている時に使います。
吐き気や頭痛がある場合に、よく効いてきます。水分の摂取を少なめにすると、効きが良くなります。一度お試しください。
全身がだるい、発疹等の症状があればご一報頂ければと思います。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシー
肝機能障害、黄疸(AST、ALT、Al-P、γ-GTP等の著しい上昇)
発疹、蕁麻疹等
添付文書(ツムラ31番)
呉茱萸湯についての漢方医学的説明
生薬構成
大棗4、呉茱萸3、人参2、生姜1.5
出典
傷寒論、金匱要略
条文(書き下し)
「穀を食して嘔せんと欲する証。」
「小陰病、吐利し、手足厥冷し、煩躁する証。」
「乾嘔、涎沫を吐して頭痛する証。」
「嘔して胸満する証」
条文(現代語訳)
「食べ物を食べて吐気が出るもの。」
「小陰病で、吐き下し、手足が冷えて熱苦しくなるもの。」
「吐き気があり、涎を吐いて頭痛するもの。」
「吐気があって胸苦しいもの。」
解説
呉茱萸湯は片頭痛の薬として有名な薬です。胃が冷えて頭痛がする場合によく用いられています。
条文と生薬構成を見ていきます。
まず条文ですが、まとめますと「吐き気、頭痛、よだれ、手足が冷たい」等が目標であると言えます。
生薬構成は、若干ですが麦門冬湯に近い方剤で、大棗、人参、が共通の生薬となります。
半分しか共通のものが無いので、似ているとは言えないかもしれませんが、両処方とも、上半身に詰まった気を下に降ろす薬であると言えます。
また、両処方とも脾胃が弱く、麦門冬湯は胃の詰まりと肺の熱燥で気が昇っている方に、呉茱萸湯は胃が冷えて気が下がらない方に使います。大棗も同じ意図で配されています。
呉茱萸は、胃を温めて乾燥させますが、味が非常にエグみ、渋み、苦みが強い生薬となります。
ですので、この特徴を逆に利用して、呉茱萸をなめて「美味しい」若しくは「飲める」と仰った方は呉茱萸湯が合っている可能性が高いとも言えます。
この処方は、胃の冷えと湿邪を取って乾燥させ温める薬ですので、逆に冷飲食をしてしまいますと効果が悪くなります。夏場に呉茱萸湯を飲まれる方は、特に注意が必要です。
また、処方決定しやすい処方でもあり、片頭痛の方が見えたら、まずはこれを試してみる、という事をしても大丈夫です(私の漢方の師匠先生は、太陽膀胱経の胃兪の冷えを蝕知して「胃寒」と確定されて使われていました。)。
鑑別
呉茱萸湯と他方剤との鑑別ですが、半夏白朮天麻湯が対象になります。
半夏白朮天麻湯証は、胃の不消化物が溜まっており、胃=意が濁っている反応をする方が多いです。
つまり、人の悪口や物事をネガティブに捉える、等の言動を常日頃から行う傾向にあります。
また、呉茱萸湯は胃の冷えと水滞になりますので、そこまで常日頃、文句を言うという事はありません。
もし解かり辛いようでしたら、両方の処方をなめさせてみて、美味しい方を選んでみても良いと思います。
続きを見る【漢方:37番】半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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