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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:8番】大柴胡湯(だいさいことう)の効果や副作用の解りやすい説明

更新日:

ポイント

この記事では、大柴胡湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、大柴胡湯の解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料としてご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

メイン

一般的なもの

今日のお薬は、大柴胡湯と言います。

風邪が長引いている時等、ストレスが身体に溜まって、それが元で身体の新陳代謝が上手く回らなくなった場合によく使われる漢方です。

吐き気がある場合が多いですが、そのような症状はありますか?

処方の中に大黄という下剤で使われる生薬が入りますので、便秘傾向にある方が多い印象です。

便通は出にくいでしょうか?(ここで、もし下痢気味という事であれば医師に確認が必要)

ストレスが取れると、お困りの○○(患者さんの症状)も楽になってくると思います。

胃もたれや下痢など起こす事がありますので、飲んでいる最中にそのような症状が出てきたらご連絡下さい。また、身体が冷えてきた場合にも、ご一報頂ければ有難いです。

一日〇回△日出ておりますので、指示通りお飲みください。

漢方医処方等、専門的なもの

今日のお薬は大柴胡湯と言います。お薬の名前に柴胡とありますが、この薬は、この柴胡がポイントになります。

風邪が長引いている時等、ストレスが身体にひっかかって、上下の巡りが悪くなっている場合に、柴胡をよく使います。

先生は右の横隔膜の下辺りを触られていたと思いますが、そこが広く固くなってくるのが、この薬を選ぶ決めてになっています。

また、上半身は何か、吐き気、キツい肩こりや、痛み、歯ぎしり、暑がり等、余分な力や熱が溜まっている事が多いのですが、そういう症状はありますか?痛み等でもいいです。

(答えが返って来てから)○○という症状が、恐らくそういうものに当たると先生は思われたのだと思います。

また、毒取りの生薬で、処方の中に大黄が入ります。この生薬は下剤でもありますので、便秘傾向にある方が多い印象です。

便通は出にくいでしょうか?(ここで、もし下痢気味という事であれば医師に確認が必要)

ストレスが取れると、お困りの○○(患者さんの症状)も楽になってくると思います。

飲んでいると胃もたれや下痢など起こす事がありますので、飲んでいる最中にそのような症状が出てきたらご連絡下さい。

また、身体が冷えてきた場合にも、ご一報頂ければ有難いです。一日〇回△日出ておりますので、指示通りお飲みください。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

間質性肺炎

肝機能異常(AST、ALT、ビリルビン値上昇等)

胃腸障害

冷え(裏寒)

添付文書(ツムラ8番)

ツムラ大柴胡湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

大柴胡湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

柴胡6、半夏4、黄芩3、枳実2、芍薬3、生姜1、大棗3、大黄1

出典

傷寒論

条文(書き下し)

「太陽病,過経十余日,反て二三之を下し,後ち四五日,柴胡の証の在る者には,先ず小柴胡湯を与う,嘔止まず,心下急,鬱々微煩する者は,未だ解せずと為すなり,大柴胡湯を与えて,之を下せば,則ち愈ゆ」

条文(現代語訳)

「太陽病が,十数日過ぎ,間違ってこの状態を2,3度瀉剤を用いて下し,その後四~五日し,柴胡の証のある者には,先に小柴胡湯を与える。嘔き気止まらず,心下が強く張り,鬱々として少し苦しむ者は,未だ治っていないと判断し,大柴胡湯を与えて下せば,すぐに治る。」

解説

風邪の長引いている者に使用するのが本来の使い方ですが、今日では、ストレスによる慢性病に使われる場合も多い処方です。

どちらの症状で診てもらったのかを患者さんに予め聞いておくと、その後の説明がかなり楽になります。

この処方の合う方は、肝鬱が甚だしく、上焦に吐き気や肩こり、歯ぎしりなどの気が結ぼれたような異常が出てきます。

特に、肝鬱の特徴として、眼に異常が出てきます。

よく、漫画で精神異常のキャラクターが描かれている際に、狂っている眼で描かれる事が多いのですが、正にそのような眼をしています。

生薬構成を見てみますと、柴胡(疎肝)、芍薬(柔肝)で肝鬱を去り、半夏(去痰)、生姜(温陽去湿)、枳実(破気)で胃の湿邪と気実を取り、黄芩(清熱)、枳実(破気)、大棗(分散)、大黄(気の下降)で上焦の結ぼれた気や熱を下焦に移動させ、最終的に排出します。

大黄の駆瘀血作用は、用量から行ってそこまで強いものではなく、便を出す事で気を下げると考えると理解しやすいと思います。

この処方を使用する場合は、配合生薬に脾胃剤や温裏剤等が殆ど含まれていない為、脾虚や裏寒の患者には不適な処方となります。

芍薬が入るという事は、食欲がある患者にしか使用できませんので、その辺りを押さえる事が重要です。

医師の処方が出ている場合は、虚状が甚だしい場合は問い合わせ、そこまで酷く無ければ足湯やレッグウォーマー等で身体が冷え込まないようフォローする事が必要となります。

鑑別

処方鑑別を書いていきます。

大柴胡湯と迷う処方は、基本的に四逆散や竜胆瀉肝湯等の肝熱を伴うものになります。四逆散は、大柴胡湯に比べて嘔気や熱が少なく、四肢が冷えているのが目標です。

竜胆瀉肝湯は、眼付きが大柴胡湯より鋭く、陰部の痒みや湿疹があり、血虚で皮膚が浅黒い場合が多くなります。全身性の化膿を伴う発疹があれば十味敗毒湯等も考えられます。

柴胡剤・瀉肝剤の各処方の特徴を押さえておくと、容易に鑑別が可能です。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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