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【漢方生薬解説】阿膠(アキョウ)【日本薬局方】

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阿膠

阿膠

こんにちは。「名古屋漢方」ブログ管理人のムセキです。

本記事は、阿膠(アキョウ)についての解説記事になります。

日本薬局方収載の生薬のうち、日本で使われている漢方処方に配されているものを抜粋しています。

名前(日本名、ラテン名、英名)と写真、基原、製法、成分、本草書(昔の薬草辞典)の記載、私の考察(私見)、代表処方中の役割をご紹介します。

日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

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生薬名

ムセキ
日本語名、ラテン語名、英名の順でご紹介します。

日本語名

阿膠(アキョウ)

ラテン語名

ASINI CORII COLLAS

英名

Donkey Glue

写真

ムセキ
wikipedia様へリンクしています。

阿膠(アキョウ)

基原

ムセキ
基原というのは、生薬の原材料である動植物や鉱石を指します。

ウマ科(Equidae)のロバ(Equus asinus Linné)

製法

ムセキ
阿膠の製造過程をご紹介します。
ウマ科(Equidae)のロバ(Equus asinus Linné)の毛を去った皮,骨,けん又はじん帯を水で加熱抽出し,脂肪を去り,濃縮乾燥し製する。

※上の文章だけだと解り辛いのですが、この過程は非常に時間がかかります。そのため、コストが非常にかかるのが難点となります。結果、昔から高貴薬として非常に値段が高く設定されている生薬になります。

成分

ムセキ
本生薬から抽出・同定された成分をご紹介します。

ゼラチン 、コラーゲン 。加水分解により リジン ・ アルギニン ・ ヒスチジン ・ システイン などのアミノ酸を産生する。カルシウム・イオウも含む。

※一言で言うと、天然の良質コラーゲンです。よく健康食品やサプリメントでコラーゲンが売られていますが、本物を求めるなら阿膠を買うのが良いでしょう。

性味・帰経

ムセキ
 「性味」「帰経」とは、漢方での生薬の働きを分類する方法を指します。

性味

味:甘

性:平

※生薬の性味は甘平ですので、字面だけ追うと注意点が無いように見えます。ですが、身体への作用は脾胃に負担がかかります。「甘味は脾胃を補う」と言われますが、実はそう単純ではありません。このようなものを見抜くには、漢方用語を単に覚えるだけでは足らず、漢方用語を深く理解し、使いこなすことが求められます。

帰経

帰経:肺・肝・腎

※捕陰の生薬になるので、肝腎というのは解りますが、肺というのは意外に思うかもしれません。この肺というのは、和血という阿膠独特の効果が強く働く臓であるためです。和血については後述します。

本草書の記載

ムセキ
本草書の条文をご紹介します。和語本草項目を参照しています。

血を和し、滋陰の作用を有し風を除き、燥を潤し、痰を化し、肺を清し、小便を利し、大腸を調え、筋骨を堅くする。

吐血、衂血(じくけつ:鼻血)、血淋(けつりん:血尿を伴う排尿痛)、尿血、大便血を止め、肺癰(はいよう:肺の炎症化膿性疾患)を治す。膿血を唾し、女人の血腹痛、血心痛、血枯(けっこ:閉経)を治す。

経水の諸症、崩中、帯下、産前産後の諸疾癰疸、腫毒、虚労、羸痩(るいそう:極度の瘦せ)、陰気の不足、咳嗽、脚足軟痛、下痢、男子の小腹痛、腰痛、水気浮腫、肝を養い、胎を安んじ、女子の労極、酒酒(せんせん:フラフラ)として瘧(おこり:間歇的な発熱)の様なものを治す。

補血・止血(軽度の出血)・滋陰・潤燥。

注意

ムセキ
漢方医学上の注意点をご紹介します。

消化器が虚弱で嘔吐するもの、脾虚で食欲のなものには用いてはいけない。阿膠には偽物が多いから注意を払う必要がある。

阿膠はしつこくて消化されにくい。消化が悪く・胸や腹がつかえて脹る脾胃気虚のものが服用すると、嘔吐・下痢を生じやすいので使用するべきでない。

※高貴薬である為、昔から偽物が多かったようです。現代の健康食品やサプリメントの「コラーゲン」についてはどうなのでしょうか。検討の余地がありそうです。

考察

ムセキ
阿膠に対する考察・私見です。

阿膠の役割は専ら「血を和す(和血)」作用と補陰作用です。血を和すというのは、混和させる、という意味と考えられます。

阿膠は天然のコラーゲンであり、加水分解されアミノ酸となります。

アミノ酸は身体組織の大部分を占めるタンパク質の構成成分であり、消化管から血液に入ります。このことを、漢方用語で捕陰や捕血等と表現しているものと考えられます。

その結果、血管内の傷等の修復が早まり、新陳代謝を早め、結果として血管内の摩擦が下がり、血が混和されるという考え方が出来ます。

そうしますと、肺胞での熱交換も促進され、肺の中の熱が緩和されることにつながり、続いて心の熱も緩和されます。

また、阿膠には軽微な吐血、衂血、血淋、尿血、大便血等を治す作用がありますが、それは血を和した結果、血管内圧力が下がり、血が血管内に引き戻される結果、出血が止まるという働きが出るものと考えられます。

肺癰を治すというのも、和血の結果、血毒が薄まり流される所以となります。

婦人病以下、種々の効に関しても、和血や補陰の結果で起こるものが列挙されています。「和血する事で、身体隅々まで気血が行き渡る。」というのも、その作用の考えを応用する手助けになります。

上にも記載がありますが、注意点は、脾虚気虚に使用出来ないということです。補陰補血の生薬は基本的に胃腸に負担がかかります。

阿膠についても同じで、消化不良を起こしやすい為、脾胃の虚が強い場合には使用出来ません。事実、脾虚気虚を改善する処方には配されていません。

また、逆にある程度脾胃の虚が改善された気血両補剤(炙甘草湯)や、脾胃に問題が無い補血剤(芎帰膠艾湯)、瀉剤(猪苓湯、温経湯)等に配されていることからも、同様のことが読み取れます。

条文で書かれている「羸痩」に関してですが、これは脾胃の虚というより気血不足(栄養不良)によるものと考えられます。その状態なら、阿膠に出番があります。

言い換えれば、胃腸の弱りのない40~60代の女性に、阿膠はお勧め、ということになります。

最後に蛇足です。阿膠の代用で食用のゼラチンが使えるかどうかという所ですが、規制云々は別にして、ゼラチンは精製され過ぎていて逆に効果が十分に出ない可能性が高いと考えられます。

煎じ薬を作る場合は、値段は高いですが素直に阿膠を使った方が良いでしょう。

代表処方

ムセキ
代表的な処方について、ご紹介します。

炙甘草湯

炙甘草湯は、「脈を復活させる」という意味で「復脈湯(ふくみゃくとう)」とも言われます。

阿膠は炙甘草湯にも配されており、その作用である和血により肺の冷却を促し、また、心肺の循環をスムーズにすることで、炙甘草湯の作用を助けているものと考えらえます。

炙甘草湯については、以下の記事をご覧ください。

参考記事
炙甘草湯
【漢方:64番】炙甘草湯(しゃかんぞうとう)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

芎帰膠艾湯

芎帰膠艾湯は、不正出血の処方として用いられています。

この処方は「血虚の聖剤」と言われる四物湯の元となったもので、当帰・芍薬・川芎・地黄が全て入っています。その上で、血の流れを良くして出血を止める、という働きがあります。

阿膠は、この処方中で、陰分を補うことで組織修復を早め、また、和血作用により出血を止める方向に働くものと考えられます。

芎帰膠艾湯については、以下の記事をご覧ください。

参考記事
芎帰膠艾湯
【漢方:77番】芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

温経湯

温経湯は、駆瘀血作用と補血作用どちらもある処方です。文字通り、冷えた経絡を温めて、気血の流れを回復させます。

この処方には麦門冬も配されており、皮膚粘膜の乾燥もみられます。阿膠は、和血作用と捕陰作用により、血流の流れを回復します。皮膚粘膜の荒れもそれで対応できます。

温経湯については、以下の記事をご覧ください。

参考記事
温経湯
【漢方:106番】温経湯(うんけいとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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最後に

ムセキ
他の記事も宜しくお願い致します。

以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

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