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補血剤の特徴
地黄が入っている方剤でも、組み合わせによって補われる部分が違ってきます。
補腎剤と同じく地黄が主剤で入っている処方群となります。ですので、胃腸障害や裏寒に注意しながら使う必要があります。
血と補腎の違いですが、腎精が元になり、それが変化したものが血と言えます。ですので、腎精は血の根、血は腎精の枝葉となります。
根である腎精を補う補腎剤は下焦を中心に髄、骨等の根本部を補い、枝葉の血を補う補血剤は補うものは血という陰ですが、補う部分は下焦の一部と中焦上焦になります。
また、補腎剤は心熱が発生しますので、それを瀉す牡丹皮が入っておりますが、逆に補血剤は、心血を補す当帰が入りますので、その部分での見極めで使い分けが出来ます。
例えば望診で、補腎剤は通常~陽気、補血剤は通常~陰気な雰囲気を感じます。
補血剤は「陰中の陽剤」と言え、補腎剤との違いを理解して処方を選択する必要があります。
補血に用いられる生薬には、以下の様なものがあります。
地黄、当帰、芍薬、川芎
次項より、補腎剤・補血剤の代表例を順に取り上げます。
補血剤の種類
四物湯、四物湯脚気加減加附子、芎帰膠艾湯、連珠飲、猪苓湯合四物湯
四物湯
構成生薬:当帰、芍薬、川芎、地黄
当帰・・・血を温め心血を養う
芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う
川芎・・・血を走り散らす
地黄・・・血を補い、血熱を冷ます
*血虚の聖剤と呼ばれ、補血剤の代表処方です。肝腎の陰を補い、当帰川芎で軽い瘀血を除いて全身の栄養状態を改善させ、様々な処方に配合されています。陰を補う処方なので、脾胃が弱いものや裏寒のものには不適です。
四物湯脚気加減加附子
構成生薬:当帰、芍薬、川芎、地黄、木瓜、蒼朮、薏苡仁、附子
当帰・・・血を温め心血を養う
芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う
川芎・・・血を走り散らす
地黄・・・血を補い、血熱を冷ます
木瓜・・・肺気を收め、脾胃の寒湿湿熱を除き、木邪を平らげる
蒼朮・・・脾胃の湿を去る
薏苡仁・・・脾胃の湿熱を捌き、肌肉の湿の留滞を除く
附子・・・腎を温補し、身体の新陳代謝を高める
*補血の効のある四物湯に、湿を除き木邪(攣急)を去る生薬を足したものになります。四物湯証があり、足がつったり痛んだりするものに使用します。
芎帰膠艾湯
構成生薬:地黄、芍薬、当帰、甘草、川芎、阿膠、艾葉
地黄・・・血を補い、血熱を冷ます
芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う
当帰・・・血を温め心血を養う
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
川芎・・・血を走り散らす
阿膠・・・血を和(混和)し、滋陰する
艾葉・・・諸経に到達して、気血の滞鬱を順行散通する
*血が冷えて凝滞を起こし、不正出血を起こしているものに使用します。凝滞を散じて気血を順行させれば、圧が分散されて不正な箇所での出血は止まります。下焦を充実させるので、血圧の高いものにも使用されます(上盛下虚の解除)
連珠飲
構成生薬:茯苓、桂皮、蒼朮、甘草、当帰、芍薬、川芎、地黄
茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する
桂皮・・・表を補い経を巡らす
蒼朮・・・脾胃の湿を去る
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
当帰・・・血を温め心血を養う
芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う
川芎・・・血を走り散らす
地黄・・・血を補い、血熱を冷ます
*苓桂朮甘湯と四物湯の合方。一般用医薬品としても発売されています。胃内停水があり、また、血虚があるものに使用します。すなわち、めまい、ふらつき、のぼせ等があり肩が凝っていて、下焦が痩せ衰えて皮膚の色艶が悪いものが目標となります。四物湯が胃腸に重いので、四物湯の量を加減しながら使用します。
猪苓湯合四物湯
構成生薬:猪苓、沢瀉、茯苓、滑石、阿膠、当帰、芍薬、川芎、地黄
猪苓・・・小便を利せさせ、下焦の湿を除く
茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する
沢瀉・・・水道を通利し、上焦の湿を除く
滑石・・・竅(九竅)を通じ、小便を通じ、胃中の灼熱を除き、湿熱を去る
阿膠・・・血を和(混和)し、滋陰する
当帰・・・血を温め心血を養う
芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う
川芎・・・血を走り散らす
地黄・・・血を補い、血熱を冷ます
*膀胱炎の治療剤として有名な猪苓湯に四物湯を足したもの。膀胱に熱が溜まって太陽膀胱経が通じないもので、心煩と呼ばれる、心に熱が溜まった状態に使います。心熱を清ましながら補血します。四物湯が入った方が良い場合と、猪苓湯のみの方が良い場合があるため、その2剤で鑑別を行う事がよくあります。また、湿熱を取る方剤でもありますので、湿熱を瀉す竜胆瀉肝湯や清心蓮子飲等と鑑別する場合もあります。
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