ポイント
この記事では、白虎加人参湯についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、白虎加人参湯の解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料としてご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、白虎加人参湯という漢方が出ています。この薬は、身体の熱を冷ます働きがあります。石膏が身体を冷やすと言われています。
今回お困りの〇〇という症状は、先生は身体に熱が溜まっているからだと考えられたようです。一度お試しください。
身体が冷えないように注意して頂くのと、規則正しい食生活を行って、夜は早く寝る事が重要です。
漢方医処方の場合の説明
今日は、白虎加人参湯という漢方が出ています。
この薬は、昔から日射病や身体の内部に熱が溜まった時に使われているお薬で、その熱を冷ます働きがあります。
入っている生薬のうち、石膏にその働きがあると言われています。
漢方医学的に、肺と胃の熱を取りながら、胃腸を建て直して元気を付ける薬です。
今回お困りの〇〇という症状は、先生は身体に熱が溜まっているからだと考えられたようです。一度お試しください。
身体を冷やすお薬になりますので、逆に身体が冷えて来たり胃腸が弱ったりする事があります。
身体が冷えないように注意して頂くのと、規則正しい食生活を行って、夜は早く寝る事が重要です。
主な注意点、副作用等(ツムラ34番)
アナフィラキシー
偽アルドステロン症
肝機能障害、黄疸(AST、ALT、Al-P、γ-GTP等の著しい上昇)
発疹、発赤、そう痒等
食欲不振、胃部不快感、軟便、下痢、口内不快感等
冷え
添付文書
白虎加人参湯についての漢方医学的説明
生薬構成
知母5、石膏15、甘草2、粳米8、人参1.5
出典
傷寒論、金匱要略
条文(書き下し)
「桂枝湯を服して、大に汗出るの後、大煩渇(だいはんかつ)して解せず、脈洪大(みゃくこうだい)なる者は、白虎加人参湯之を主る。」
「傷寒、若(も)しくは吐し若しくは下して後、七八日解せず、熱結(ねっけつ)裏に在り、表裏共に熱して、時々悪風、大渇(だいかつ)舌上(ぜつじょう)乾燥して煩し、水数升(すうしょう)を飲まんと欲する者は、白虎加人参湯之を主る。」
「傷寒脈浮き、発熱し無汗、その表解さざるもの、白虎湯を与うべからず。水を飲まんと欲し、表証無き者、白虎加人参湯之を主る。」
「太陽の中熱は暍(えつ:日射病・熱射病)これなり、汗出て悪寒し身熱して渇す。白虎加人参湯之を主る。」
条文(現代語訳)
「桂枝湯を飲んで大汗をかいた後、喉が非常に乾くのが治らず、脈が洪大の者は、白虎加人参湯で治ります。」
「風邪で、吐いたり下痢したりした後、一週間程治らず、熱が身体の内部に籠(こ)もり、身体の内部と表面両方に熱があり、時々風を嫌がり、喉が非常に乾き、舌が乾燥して暑苦しく、水を大量に飲みたがる者は、白虎加人参湯で治ります。」
「風寒の邪を受けて脈が浮き、発熱し無汗、その表が解さないものは白虎湯は与えてはならない。水を飲みたがり、表証が無いものは白虎加人参湯で治ります。」
「太陽の熱に中(あた)るものは日射病であり、汗が出て悪寒して身体が熱くなり喉が渇く。白虎加人参湯で治ります。」
解説
白虎加人参湯は、四神のうち西に位置する白虎の名前が付けられた処方です。
西の方角の代表的な生薬としては石膏があり、この白虎加人参湯には石膏が大量に配されています(残りの東、南、北はそれぞれ麻黄、莞花(げんか)、附子)。
乾燥地帯で用いられるとされる処方であり、条文通りに「日射病や熱射病の様な強い熱が身体に入り込んで抜けない時」に用いられます。
陽明病に位置する処方で、表証が無い場合に胃と肺の強い邪熱を去る処方となります。
生薬構成を見ていきます。処方中の生薬は、清熱の知母・石膏と捕脾の甘草・粳米・人参の2系統に分かれます。
知母は腎熱を瀉す事で肺が焼かれる事を防ぎ、石膏で直接肺熱を取り除きます。それと同時に甘草・粳米・人参により、捕脾をして補気します。
本処方については、人参や粳米が入ってはいますが、石膏が大量に含まれておりますので脾胃が弱っている場合や裏寒がある場合は使えない処方です。
使用の際には、それらについて注意が必要となります。
鑑別
白虎加人参湯と鑑別が必要な処方として、同じ夏場によく使う清暑益気湯があります。
清暑益気湯は、その生薬構成が、蒼朮、人参、麦門冬、黄耆、陳皮、当帰、黄柏、甘草、五味子となり、その証には肺の熱燥と気虚、脾胃の虚が存在します。
どちらかと言いますと、夏バテなどに用いられる処方となり、日射病熱射病等の急性の熱結ではありませんので、その辺りで鑑別が可能となります。
どちらの処方も知っておくと、いざという時に慌てなくて済みます。
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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