特殊な使い方をする方剤で、有用なものについて書いていきます。
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その他方剤の種類
甘麦大棗湯、排膿散及湯、治打撲一方、通導散、乾姜人参半夏丸、小半夏加茯苓湯、異効散、栝楼薤白半夏湯、栝楼薤白白酒湯、利膈湯、二朮湯、伯州散
その他方剤解説
甘麦大棗湯
構成生薬:甘草、小麦、大棗
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
小麦・・・煩渇を除き、汗を収め、尿を利し、血を止め、心気を養う。
大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す
*3味の簡単な処方ですが、現代人には非常に合う処方です。大棗甘草で脾胃を補うと同時に急迫を沈め、それぞれ前者で分散、後者で緩和させ、肝気を補して感情をスムーズにし、心気を補い処理させます。心気虚になると気が逆厥し、思考停止状態になったり憂鬱な気分になったりします。応用として、急迫を緩和して自律神経を調節するので、アトピーや喘息に使用したりします。
排膿散及湯
構成生薬:桔梗、甘草、枳実、芍薬、大棗、生姜
桔梗・・・気を升らせて肺分に至らせ、結果、一切の気を下降させる。諸薬の気を上行させる。
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
枳実・・・腸胃の気、血、痰、熱、食、水などの一切の積結堅滞を破る
芍薬・・・肝陰を補い、裏を和らげる。温補し過ぎるのを防ぎ、水を逐う
大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す
生姜・・・脾胃を温め、気を発散させる
*頭部の気の実滞を取り去り、排膿させます。比較的虚証の歯ぐきの腫れ、中耳炎、蓄膿症等によく使用されます。枳実や桔梗位しか瀉剤と呼べる生薬は入っていませんが、それらの生薬を効果的に支援する補気剤、補陰剤が効果的に配置されています。無理やり膿を出すのではなく、最小限の排毒生薬を使い身体の治癒機能を最大限に活かす方剤といえます。
治打撲一方
構成生薬:桂皮、川芎、川骨、甘草、大黄、丁子、樸樕
桂皮・・・表を補い経を巡らす
川芎・・・血を走り散らす
川骨・・・気を補い、脾胃を厚くする。打撲による精神的な打撃を回復させる
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
大黄・・・処々の実熱して不通な箇所を瀉し、瘀血を破り下す。下焦の湿熱を除く
丁子・・・胃を暖め胃寒を去り、肺気の冷滞を退け、一切の塞がる気を退け、穢毒、邪悪の気を退ける
樸樕・・・強い収斂作用をもち、止血の効がある。と同時に、気つけの意味も持つ
*打撲時の熱を持った瘀血を去りながら止血し、それと同時に気(精神、気力)への打撃も回復させます。打撲時の紫斑を去る目的で、使用されます。同様の目的で、通導散も使用されます。
通導散
構成生薬:枳実、大黄、当帰、甘草、紅花、厚朴、蘇木、陳皮、木通、芒硝
枳実・・・腸胃の気、血、痰、熱、食、水などの一切の積結堅滞を破る
大黄・・・処々の実熱して不通な箇所を瀉し、瘀血を破り下す。下焦の湿熱を除く。
当帰・・・血を温め心血を養う
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
紅花・・・瘀血を行らせる
厚朴・・・胃の実滞を除去し、胃を賦活して暖め、気を下降させる
蘇木・・・血を破る
陳皮・・・脾胃の気を動かし、巡らす
木通・・・気血を通じ、小便を利す。湿熱を泄し、火熱を導き下す
芒硝・・・堅積を砕く。大便を解し、小便を通じる。三焦腸胃の実熱、宿垢、火邪を折る。
*瘀血が存在する事で気が下らず、知らずに食べ過ぎて胃が詰まり、気が狂うものに使用します。元々は百叩きの刑の後の処理に用いられた薬方です。クラッシュシンドロームの予防として、地震時等に使用できます。応用として、打撲や手術後の瘀血を下すのに用いられます。
乾姜人参半夏丸
構成生薬:乾姜、人参、半夏
乾姜・・・脾胃を温める。生姜のように発散の効は少なく、裏を温めるのに適している
人参・・・脾胃の補気を行う
半夏・・・脾胃の痰を去り、気を落とす
* 小半夏加茯苓湯が妊婦の悪阻(つわり)によく使われますが、脾胃の冷えが伴っている場合はこの処方の方が適している場合が多いです。生姜ではなく乾姜を使うので、肺を温め発散させる効は少なく、気を裏に保持したまま、悪阻を取る事ができます。
小半夏加茯苓湯
構成生薬:半夏、茯苓、生姜
半夏・・・脾胃の痰を去り、気を落とす
茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する
生姜・・・脾胃の補気を行う
*妊婦のつわりによく用いられます。脾胃の力を使い、半夏で胃に痞えている痰を除き、同時に茯苓で滞留している水を除きます。脾胃が温まって元気であり、痰飲が存在して気が詰まるものに使用します。
異効散
構成生薬:蒼朮、人参、茯苓、甘草、生姜、大棗、陳皮
蒼朮・・・脾胃の湿を去る
人参・・・脾胃の補気を行う
茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
生姜・・・脾胃の補気を行う
大棗・・・脾胃を補う事で肺氣を補い、陰陽を和す
陳皮・・・脾胃の気を動かし、巡らす
*四君子湯に1味陳皮を足した薬方で、六君子湯の手前。四君子湯が脾の気虚を中心として作用するのに対し、異効散は脾を補い胃に力をつけて、陳皮で動かします。四君子湯に1味足しただけですが、効果が全く異なるので異効散と名づけられています。
栝楼薤白半夏湯
構成生薬:栝楼仁、薤白、半夏、白酒(酢)
栝楼仁・・・肺胸の鬱熱、燥痰を潤し去り、咳嗽、消渇、口乾を治す
薤白・・・辛苦温。中を温め、結気を散じ、水気を去り、陽道を助ける
半夏・・・脾胃の痰を去り、気を落とす
白酒(酢)・・・消腫散水、血運を治し癥積(腹腔内の硬い固定性の腫瘤)を除き、瘀血を散じ、魚菜の毒を殺し、黄疸を治し、気を下す
*胃が詰まり、胸郭が湿熱により気が閉塞して胸苦しいものに使用します。栝楼仁、薤白、半夏を酢と水半々で煎じて作ります。処方には白酒は含まれないので、患者に黒酢を買って水と酢半々で煎じるように指示します。普通の煎じと違い、少量を少しずつ飲むよう指示します。煎じの使用期限2日間に限らず、いつまでも冷蔵庫で保存できます。心不全等に使われます。
栝楼薤白白酒湯
構成生薬:栝楼仁、薤白、白酒(酢)
栝楼仁・・・肺胸の鬱熱、燥痰を潤し去り、咳嗽、消渇、口乾を治す
薤白・・・辛苦温。中を温め、結気を散じ、水気を去り、陽道を助ける
白酒(酢)・・・消腫散水、血運を治し癥積(腹腔内の硬い固定性の腫瘤)を除き、瘀血を散じ、魚菜の毒を殺し、黄疸を治し、気を下す
*胸郭が湿熱により気が閉塞して胸苦しいものに使用します。痍の詰まりはあまりありません。栝楼仁、薤白を酢と水半々で煎じて作ります。処方には白酒は含まれないので、患者に黒酢を買って水と酢半々で煎じるように指示します。普通の煎じと違い、少量を少しずつ飲むよう指示します。煎じの使用期限2日間に限らず、いつまでも冷蔵庫で保存できます。心不全等に使われます。
利膈湯
構成生薬:半夏、山梔子、附子、甘草、乾姜
半夏・・・脾胃の痰を去り、気を落とす
山梔子・・・肺熱、心熱、胃熱を除く。経絡の熱、大腸、小腸の曲屈した熱を去る(奥深くまで浸透する)
附子・・・腎を温補し、身体の新陳代謝を高める
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
乾姜・・・脾胃を温める。生姜のように発散の効は少なく、裏を温めるのに適している
*胸に熱が詰まり、胃が痞えて胸苦しいものに使用します。利膈湯の本来の構成は半夏、山梔子、附子ですが、甘草と乾姜が入ることで四逆湯の方意が入ります。即ち、胸に熱があり胃が詰まるが裏寒が存在して心が冷えて動いていないものに使用します。
二朮湯
構成生薬:半夏、蒼朮、威霊仙、黄芩、香附子、陳皮、白朮、茯苓、甘草、生姜、天南星、和羗活
半夏・・・脾胃の痰を去り、気を落とす
蒼朮・・・脾胃の湿を去る
威霊仙・・・風を散じ、濕を泄し、積滞を推し、痰飲を消し、腹内の冷滞、腰膝冷痛を消す
黄芩・・・肺熱を去り、気を下す
香附子・・・気分の爵を散行する
陳皮・・・脾胃の気を動かし、巡らす
白朮・・・脾胃の湿を取り、脾を健やかにし益気する
茯苓・・・体内の水を巡らせ、利水する
甘草・・・脾胃を補い、諸薬を調和し、急迫を緩和する
生姜・・・脾胃の補気を行う
天南星・・・肝肺脾に入り、辛苦温にして、専ら上焦の風痰の結滞を開通する
和羗活・・・風を逐い、濕を除く
*脾胃を助けて上焦に気を送り、肺熱を去りながら気滞水滞、痛みを去ります。酷い肩こり、五十肩等によく使用されます
伯州散
構成生薬:津蟹霜、鹿角霜、半鼻霜
津蟹霜・・・鬱血を散じ、筋肉を壮んにする
鹿角霜・・・熱を散じ、血を巡らし、腫を消す
半鼻霜・・・興奮、強壮、発表、温補、鎮痛、排膿、肉芽形成
*生薬を黒焼きにしたものを霜(そう)と呼びます。これを用いれば腫が消える、と言われている所から、別名「外科倒し」と名付けられています。内服では、主に慢性の化膿性疾患に用い、外用では、怪我の創傷治療に用いられます。紫雲膏と混ぜて塗ると、神効を発揮します。内服の場合は、癌などの浸潤性のものには不適です(傷口を蓋してしまい、毒が内部に入り込んでしまうため)
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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