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【漢方生薬解説】延胡索(エンゴサク)【日本薬局方】

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延胡索

延胡索

こんにちは。「名古屋漢方」ブログのムセキです。

本記事は、延胡索(エンゴサク)についての解説記事になります。日本薬局方収載の生薬のうち、日本で使われている漢方処方に配されているものを抜粋しています。

名前(日本名、ラテン名、英名)と写真、基原、製法、成分、性味・帰経、本草書(昔の薬草辞典)の記載、注意、私の考察(私見)、代表処方中の役割をご紹介します。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

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生薬名

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日本語名、ラテン語名、英名の順でご紹介します。

日本語名

延胡索(エンゴサク)

ラテン語名

CORYDALIS TUBER

※TUBER(テューベル)は根茎ですが、その中でも丸々としている「塊茎(かいけい)」という意味です。ちなみに、地下茎は地上茎の枝葉にあたるRADIX(ラディックス:根)と、幹にあたるRHIZOMA(リゾーマ:根茎)に大別されます。TUBERはRHIZOMAの一種にあたります。

英名

Corydalis Tuber

写真

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 「漢方薬のきぐすり.com」様へリンクしています。

延胡索(エンゴサク)

※見て頂ければ解ると思いますが、コロコロとした生薬となります。これがTuber(塊茎)の特徴となります。半夏や麦門冬も同じTuber(塊茎)です。

基原

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基原というのは、生薬の原材料である動植物や鉱石を指します。

ケシ科(Papaveraceae)のチョウセンエンゴサク(Corydalis turtschaninovii Besser forma yanhusuo Y. H. Chou et C. C. Hsu)の塊茎

※現在、薬用とされているのは中国東部算出のチョウセンエンゴサクで、日本に自生しているヤマエンゴサクやジロウボウエンゴサクは使用されていません。ちなみに、次郎坊というのが日本に自生するジロウボウエンゴサクのことですが、太郎坊というのはスミレのことです。昔の子供は、次郎坊と太郎坊それぞれの野草の茎を引っ張り対戦して遊んでいたようです。いつの時代も、子供は対戦(勝ち負け)が好きですね。

製法

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延胡索(エンゴサク)の製造過程をご紹介します。

ケシ科(Papaveraceae)のチョウセンエンゴサク(Corydalis turtschaninovii Besser forma yanhusuo Y. H. Chou et C. C. Hsu)の塊茎を採取後湯通しし、日干乾燥して製する。

成分

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本生薬から抽出・同定された成分をご紹介します。

アルカロイド類(l-コリダリン、デヒドロコリダリン、d-テトラヒドロパルマチン等)

性味・帰経

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 「性味」「帰経」とは、漢方での生薬の働きを分類する方法を指します。

性味

味:辛、苦

性:温

※延胡索は瘀血を除く生薬ですが、性が温である為、温性駆瘀血薬というカテゴリーになります。つまり、血熱がある場合には不適となります。また、味が苦いというのは、気や血の滞りを逸らすような働きがある場合に使用されます。また、辛というのは、発散したり、温めたりする場合に使用される味となります。しかし、本生薬にはアルカロイドを含む為、味見をした時の味も苦いです。余談ですが、アルカロイドは作用の強い成分が多く、苦く感じます。ですので、子供は本能的に苦いものを避けるのは、毒を避けているという側面もあります。

帰経

帰経:肝

※書物によっては、帰経を「肝・胃」としているものもありますが、「胃」に関しては効能上疑問符がつきます。その為、ここでは、胃を外して帰経は肝のみとしています。

本草書の記載

ムセキ
和語本草綱目の条文をご紹介します。

血を破り、閉経、血塊、癥瘕(ちょうか:子宮筋腫)、崩中(多量の不正出血)、産前産後の諸々の血病を治す。打ち身、瘀血、腰腹の痛み、一切の痛みを治す。結気を利し、経絡を通じる。

※延胡索の場合、瘀血そのものを破り壊すというよりは、温めて気を通すことで、瘀血を通じさせます。駆瘀血剤の中では軽めの生薬と言えます。そのため、安中散にも入れることが出来ると考えています。

注意

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漢方医学上の注意点をご紹介します。

久しく服すると正血を損ない、胃の気を破る。血熱の者には用いない。血虚気虚のものには用いることは出来ない。妊婦には禁忌である。

※逆の表現では、気虚陽虚等の虚状が無いかまたは少なく熱もあまり見られない場合の、気の詰まりを伴う瘀血には使用できるということになります。血熱に使用できないということは、実熱を帯びる瘀血や温病等には使用不適と言えます。

考察

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延胡索(エンゴサク)についての考察・私見です。

延胡索は瘀血を破る生薬です。そのため、女性の月経が無いものや、血の塊や、子宮筋腫、瘀血による多量の不正出血などに用いることができます。

また、産後の瘀血によって、腹痛、身の痛み、眩暈などの諸症状を緩和します。その他にも、打撲による組織損傷の瘀血、気滞によって痛みが出る者にも用います。

現代医学的な使い方としては、手術後の瘀血等にも使用できると考えられます。腰痛、下腹部の痛みのなかで、瘀血に因るものに効果があります。

延胡索は、血中の気滞、気中の血滞を巡らします。つまり、気が詰まることによる瘀血に使用するということです。それ故に、身体の上下一切の痛みを止めることが出来ます。

更に詰まっている気を利し、経絡中の血の滞りを通します。延胡索の作用は、痛みに関しての効は多岐にわたるものの、結局のところ瘀血の処置によるものになります。

注意点として、延胡索は温性駆瘀血薬となりますので、気虚や裏寒、血虚等の虚状が激しい場合、また、血熱がある場合は使用不適となります。

長服で胃気を損耗しますので、注意が必要です。

最後に、これが一番大切ですが、妊婦には使用禁止です。理由は駆瘀血薬だからです。蛇足ですが、同様に桃仁、牡丹皮等の駆瘀血薬も妊婦には使用できません。

このことは、駆瘀血剤を使用する上で基本中の基本となります。十分に注意して使用するようにしましょう。

代表処方

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代表的な処方について、ご紹介します。

安中散

安中散は、胃腸が元々弱いのにも関わらず、食べすぎ傾向で口の周りが荒れている女性によく用います。

また、術後の体力回復の処方としても適しています。延胡索は駆瘀血薬である為、瘀血が原因となっている腹部疝痛や、術後で胃腸が弱っているのにもかかわらず瘀血がある場合等に適しています。

安中散の面白い所は、胃気を損耗しかねない延胡索が配されているところです。他の生薬との効果の差し引きで、胃の状態が良くなくても駆瘀血出来るよう工夫されています。

意外と知られていませんが、安中散は駆瘀血剤という側面があります。この使い方を知っていると、処方運用の幅が非常に広がります。

安中散の詳しい説明は、以下の記事にてご覧ください。

参考記事
【漢方:5番】安中散(あんちゅうさん)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

折衝飲

折衝飲は、瘀血と血虚が同時に存在する場合に適応となります。その配合生薬に延胡索も存在し、駆瘀血作用を目的とされています。

駆瘀血に伴い、月経痛を温め鎮痛し、また、筋肉、関節痛の緩和等が期待されます。

ちなみに、折衝飲は胃腸に関する薬が入っていないため、脾胃の虚がある場合は使いづらい処方となっています。

最後に

ムセキ
他の記事も宜しくお願い致します。

以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

参考記事
「漢方薬の効果や副作用の解りやすい説明」データベース

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〈性〉〈能〉〈毒〉〈解説〉処方: 安中散折衝飲

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