こんにちは。「名古屋漢方」ブログのムセキです。
本記事は、鬱金(ウコン)についての解説記事になります。日本薬局方収載の生薬のうち、日本で使われている漢方処方に配されているものを抜粋しています。
名前(日本名、ラテン名、英名)と写真、基原、製法、成分、性味・帰経、本草書(昔の薬草辞典)の記載、注意、私の考察(私見)、代表処方中の役割をご紹介します。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
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生薬名
日本語名
鬱金(ウコン)
※欝というのは、鬱病ではなく「鬱血(うっけつ)」の意味で、金というのは五行の肺を意味します。ですので、肺の鬱血を取り除くという意味で「鬱金(ウコン)」と名付けられています。
ラテン語名
CURCUMAE RHIZOMA
英名
Turmeric
写真
基原
ショウガ科(Zingiberaceae)のウコン (Curcuma longa Linné)の根茎
製法
ショウガ科(Zingiberaceae)のウコン Curcuma longa Linnéの根茎 根茎を洗浄後,コルク層を除き,湯通しするか蒸した後,日干又はあぶって乾燥する.
成分
精油(ターメロン、ジヒドロターメロン、ジンギベレン、d-αーフェランドレン等)、シネオールポリフェノール類(クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン等)
性味・帰経
性味
味:辛、苦
性:寒
※本によっては寒ではなく涼となっているものもあります。大まかな意味は同じで、身体を冷やす方向の生薬になります。
帰経
帰経:心、肺、肝、胆
※本生薬は、上述の通り「欝金」という名前ですので、帰経は肺だとおもわれがちですが、その漢方学的薬理作用は「欝血を去る」というもので、血が関与します。また、肺は心とセットになることが多いのが特徴です。また、欝金は胆汁量も増やす働きがあり、胆にもその影響範囲が出ます。そのような関係から、本記事での帰経は心、肺、肝、胆としています。帰経についても、性味と同じように書物によってばらつきがあります。
本草書の記載
瘀血を破り、心腹痛(しんぷくつう:胸部痛、腹痛)を治し、虫毒(ちゅうどく:虫刺され)を去る。 血淋(けつりん:血尿)を止め、陽毒(ようどく:熱邪)が胃に入って下血するのを治す。
※ここでの瘀血は悪血の意味。また、虫毒に使用するという表記から、中黄膏へ配されている理由が類推されます。
注意
気実上逆のものでなけねば用いることは出来ない。おおよそ逆上せるものには、逆上せるのを補助してやると自然に下がるものであるが、そのような悠長な事を言っておられない場合に、鬱金は用いられる。即ち、鬱金は軽く上げ上行するものではない。鬱金は逆気を引いて下降させる。故に、陽気不足して虚寒のものには用いることは出来ない。
考察
カレーの代表的香辛料として有名な欝金です。食用として、主にカレーに使用されています。
日本で主に使われている漢方処方においては、中黄膏に配されています。
しかし、古来、本生薬は現代医学で言う心筋梗塞などの脇痛の劇症に用いられてきました。心筋梗塞に関しては、漢方医学上では気の欝滞と瘀血を兼ね備えるものに対して駆瘀血的効用のある薬方を用います。
ですが、気滞ではなく鬱血による障害に対しては鬱金を用いるのが最も効果的あると考えられます。
上でお話した通りですが、鬱金という名前が示すように、金は肺の部位を指し、この部位の欝滞を主に主治するために、鬱金という名前が命名されています。
鬱金は、悪血(あくけつ、あっけつ)を去る効があります。
悪血と瘀血の異なりは、悪血とは全身に巡る悪い血の意味であり、瘀血はその字の如く、澱んで濁ってしまった血(瘀滞した血)のことを意味します。
欝金とは違い、桃仁にはその用いられ方から類推するに、悪血に対しての効用は薄いと考えられます。
また、紅花の瘀血に対しての効用は、血液の流通性を改善する効になります。
通常、瘀血という状態は下焦に滞るものであり、その影響が全身に及ぶと考えられているものですが、悪血という表現は血液の中を流通している血液そのものに問題があり起きる現象をそう呼んでいます。
この点において、鬱金はこの部位のみの薬味であると理解してもいいようです。つまり、和語本草綱目の心腹痛、血淋、下血という症状は、全て悪血により起こる症状となっております。
また、鬱金が東洋医学の世界よりも現代医学的に肝臓に対しての効を目的として用いられているのは、沖縄の生活習慣の中に、鬱金をお茶として頻繁に用いることによって、長寿を得られると言う民間的な利用方法が元にあるようです。
悪血を浄化させると言うことは、その血液を蔵する肝臓に対しての効用があるという意味と同じ意味であり、現代医学的な肝臓の解毒機能を高めるという点において、その使用方法は理解できるのではないでしょうか。
しかし、上記の使い方が考えられるのにも関わらず、内服の漢方処方には配されておりません。
現在の日本においては、外用薬としてのみ漢方処方に配されています。実際に内服に用いる場合、粉末の欝金という選択になります。
外用で用いる場合は、患部の邪を清めるという目的と、悪血を除くという効を期待して用いられます。
また、サプリメントやドリンク等で、宴会前にアルコール分解目的で服用する方法が流行っています。そもそもそれらの中身にしっかりとした鬱金量が入っているかは疑問ですが、血の浄化という目的はある程度理解できるものがあります。
ですので、もし飲まれる場合はしっかりと鬱金が入っているものを摂取すると良いでしょう。
欝金の使用注意点ですが、その性から実熱の血液毒に用いますので虚寒のものには使用不適となります。その為、四逆とよばれる四肢厥逆(ししけつぎゃく:四肢の冷えと頭部への逆上せ)状態との鑑別が必須となります。
最後に、今後の鬱金の使用方法についての展望です。
本生薬は、性が寒で悪血と呼ばれる血液毒を清し、恐らくそれを胆汁として排泄するものと考えられます。その為、昨今流行っている温病の範疇に入る感染症の後遺症等で用いることができる可能性があります。
その性質上、裏寒や気虚に陥らせないように注意を払う必要がありますが、そこを温裏剤などでテコ入れをして鬱金を服用させることで、その病態を改善させるかもしれません。
選択肢の一つとして覚えておくと良いでしょう。
代表処方
中黄膏
中黄膏(ちゅうおうこう)は、.皮膚の急性化膿疾患の初期,打ち身や捻挫等に対して使われます。処方に配されている欝金は、悪血を去り、邪熱を清するという能があります。
余談ですが、中黄膏は非常に黄色く、ごま油のにおいもする為、衣服につくと大変なことになります。塗布する際は、ガーゼなどに塗り付けて貼り付けるなどの工夫を行い、衣服につかないように注意した方がいいでしょう。
最後に
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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