こんにちは。「名古屋漢方」ブログのムセキです。
本記事は、黄連(オウレン)についての解説記事になります。日本薬局方収載の生薬のうち、日本で使われている漢方処方に配されているものを抜粋しています。
名前(日本名、ラテン名、英名)と写真、基原、製法、成分、性味・帰経、本草書(昔の薬草辞典)の記載、注意、私の考察(私見)、代表処方中の役割をご紹介します。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
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生薬名
日本語名
黄連(オウレン)
ラテン語名
COPTIDIS RHIZOMA
英名
Coptis Rhizome
写真
基原
キンポウゲ科(Ranunculaceae)のオウレン(Coptis japonica Makino), Coptis chinensis Franchet, Coptis deltoidea C. Y. Cheng et Hsiao又は Coptis teeta Wallichの根をほとんど除いた根茎
製法
キンポウゲ科(Ranunculaceae)のオウレン(Coptis japonica Makino), Coptis chinensis Franchet, Coptis deltoidea C. Y. Cheng et Hsiao又は Coptis teeta Wallichの根をほとんど除いた根茎を秋期に採掘し,地上部,ヒゲ根,泥土を除去して1~ 2日干し,ヒゲ根の残りを火で焼いた後,磨いて再度日干しする。
成分
アルカロイド(ベルベリン、パルマチン、コプチジン、オウレニン、ジャテオルヒジン、マグノフォリン等)
※黄柏と同じベルベリンが主成分ですが、黄柏が下焦の実熱を取るのに対し、黄連は心熱を瀉す生薬として使われます。
性味・帰経
性味
味:苦
性:寒
※苦という味は、気を逸らす働きがあります。結果、結ぼれた熱がある場合、それを散開させ熱を取るものと考えられます。また、寒という性は、涼や微寒とは違い、強烈に熱を瀉すということを意味しています。
帰経
帰経:心
※心は中心の意味も兼ね備えます。そのため、できものの初期、非常に熱が強い場合に黄連の場があります。また、そのできものは、その性質上、上焦によく発生します。そのため、ニキビや頭のできものには、黄連がよく使用されます。
本草書の記載
熱を清くし、諸瘡(そう:できもの)、諸痛、諸々の血証、眼疾(がんしつ:目の病気)、消渇(しょうかち:糖尿病)、泄痢(下痢)、痞満(腹部の腫れ)を治す。小児の疳の虫、胎毒、湿熱を除く。
注意
心元(しんげん:心の元気)の不足のもの、脾胃虚弱なもの、腎元虚冷(じんげんきょれい:裏寒)のもの、元気不足(げんきふそく:気虚)して虚熱のあるものに用いることは出来ない。陽気虚冷のものには絶対に用いてはいけない。
考察
黄連は手の少陰心経に入って、邪熱を瀉す生薬です。上焦、心火の熱そのものを瀉する剤になります。更に、この作用が中焦の脾胃の熱を冷ますまで及びます。
これは、考え方によって「中焦の火熱は、心熱のために派生したもの。」と考えることも出来ます。
条文内の「瘡(そう:できもの)」についてですが、色々な実熱による瘡は、中心に熱を帯びる為、心火に属するものと言えます。
黄連は、よく心火を瀉す為、瘡の初めの頃の特に実熱が強い時期に使用します。しかし、瘡が出来て時間が経って潰れてしまったものには不適となる場合があります。
この場合、化膿し膿胞となっている場合があり、その場合は桔梗等で排膿する必要がある為です。
心火による瘡は、大体が上焦心肺の部位に起きるもので、口内炎やニキビ等の顔のできものをはじめとする上半身の瘡に最も効果を発揮します。
また、一説には、婦人の陰部にできる諸瘡に効果があるとも言われていますが、これは、黄連直接の作用ではない可能性があります。
というのも、上焦に火熱を帯びるときは相対的に下焦は虚状を示すことが多く、下焦は虚火の炎症を起こすこととなります。上焦の実火を下すことで、下焦の虚火は自然に治癒します。
婦人下焦の瘡自体が虚火によるものである場合があり、黄連で上焦の熱を下した二次作用で治癒していくと考えられます。温清飲の作用が、この代表的な考え方になります。
諸痛に効くと条文でありますが、これは心火に属するものであることを忘れてはいけません。あくまで、心の実熱があってこその痛みということです。
そのため、この痛みというのは心の痛み、あるいは、諸瘡の腫れた痛み、心脾の実熱による痛みと限定されます。
次に、諸血症への効が書かれていますが、漢方医学での血液を考える上において、基本的に「心臓は血液を生じ、肝臓は血液を蔵する、脾は血液を総る。」という定義があり、これを踏まえる必要があります。
血液というものは、熱を持つと妄行すると述べています。この血液が身体の各竅(きゅう:穴)から出す者に、黄連を用います。
血熱を冷ますことによって、自然と止血させます。夏炎天下にいるとき、部屋の空気が暑くて鼻血を出すものは、これらの類によるものなのかもしれません。
つまり、これらは実熱によるものであるということになります。
眼疾というのは眼病のことで、眼目、赤く腫れ、痛み、涙が出ることが急激に起こるものは、火熱によるものになり、黄連の適応となります。
目病の多くは、実熱になりますので、この論が成り立ちます。市販薬で黄連エキスが入った目薬がありますが、この実熱を瀉す目的で配されているものと考えられます。
ですが、時として虚熱虚寒による目の疾患という場合もある為注意する。消渇に対する黄連の効は、三焦の火熱を瀉すためです。
泄痢は下痢のことで、初めは腸胃の実熱湿熱に属しますその為、黄連の適応となる場合があります。しかし、時として虚による下痢が存在するから注意を要します。
最後に、黄連のその苦さは湿にうち勝ち、寒は熱を清します。つまり、湿熱を去ることが出来ます。下痢や腹痛は湿熱の致すことが多く、これに黄連の効果があるのはこの意味となります。
代表処方
黄連解毒湯
黄連解毒湯は、黄連、黄芩、黄柏、山梔子の四味からなる処方です。酒毒や食あたりなどで強烈な熱がある場合に使用しますと、非常によく効きます。黄連はその中でも君薬であり、先頭に立って邪熱を逐います。
黄連解毒湯の詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:15番】黄連解毒湯(おうれんげどくとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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半夏瀉心湯
半夏瀉心湯は、上焦心熱と下焦虚冷を兼ねる上熱下寒に対する薬です。名前にもある通り、黄連は心の実熱を去ります。下焦を温める乾姜と合わせ、上下の気の交わりを復活させる処方となります。
半夏瀉心湯の詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:14番】半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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最後に
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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