こんにちは。「名古屋漢方」ブログのムセキです。
本記事は、樸樕(ボクソク)、桜皮(オウヒ)についての解説記事になります。日本薬局方収載の生薬のうち、日本で使われている漢方処方に配されているものを抜粋しています。
名前(日本名、ラテン名、英名)と写真、基原、製法、成分、性味・帰経、本草書(昔の薬草辞典)の記載、注意、私の考察(私見)、代表処方中の役割をご紹介します。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
※歴史的に樸樕の代用品として桜皮が用いられておりますので、両生薬を同時に解説致します。
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生薬名
日本語名
樸樕(ボクソク)、桜皮(オウヒ)
ラテン語名
樸樕(ボクソク)
QUERCUS CORTEX
桜皮(オウヒ)
PRUNI CORTEX
英名
樸樕(ボクソク)
Quercus Bark
桜皮(オウヒ)
Cherry Bark
写真
樸樕(ボクソク)
桜皮(オウヒ)
基原
樸樕(ボクソク)
ブナ科(Fagaceae)のクヌギ(Quercus acutissima Carruthers),コナラ (Quercus serrata Murray),ミズナラ(Quercus mongolica Fischer ex Ledebour var. crispula Ohashi)又はアベマキ(Quercus variabilis Blume)の樹皮
桜皮(オウヒ)
バラ科(Rosaceae)のヤマザクラ(Prunus jamasakura Siebold ex Koidzumi)又はカスミザクラ(Prunus verecunda Koehne)の樹皮
製法
樸樕(ボクソク)
ブナ科(Fagaceae)のクヌギ(Quercus acutissima Carruthers),コナラ (Quercus serrata Murray),ミズナラ(Quercus mongolica Fischer ex Ledebour var. crispula Ohashi)又はアベマキ(Quercus variabilis Blume)の樹皮を採取し、水洗い後に日干する。
桜皮(オウヒ)
バラ科(Rosaceae)のヤマザクラ(Prunus jamasakura Siebold ex Koidzumi)又はカスミザクラ(Prunus verecunda Koehne)の樹皮を剥ぎ、乾燥し製する。
※ソメイヨシノ(Cerasus × yedoensis ‘Somei-yoshino’)は使用しない。
成分
樸樕(ボクソク)
フラボノイド(クエルシトリン等)、オキシクマリン配糖体(スコポリン、フラキシン)、その他(タンニン,デンプン,糖類,脂肪等)
桜皮(オウヒ)
フラボノイド(サクラネチン、サクラニン、ゲンクワニン等)
性味・帰経
性味
味:辛
性:平
※樸樕の性味を記載しています。桜皮は文献がありませんが、同様のものと考えられます。
帰経
帰経:不明(私案は肝・肺)
※樸樕は基原が多種であるという点、桜皮は日本独自の民間薬として利用されてきたという所から、文献が不足しています。私案は、解毒、駆瘀血、去痰という所から、肝と肺にしています。
本草書の記載
悪瘡(あくそう)、風に中(あた)り、毒露(どくろ:湿邪のこと)に侵されしもの。煎汁を取り、瘡を洗い、まさに膿血つくして止ましむべし。
※樸樕の条文を記載しています。桜皮は文献がありませんが、同様のものと考えられます。
注意
脾胃虚弱、裏寒のものには不適(私案)。
考察
樸樕は基原植物が多種類あり、桜皮は樸樕の代用として用いられてきた背景があり、文献もあまり無いという状況から、何とも考察し難い生薬になります。
十味敗毒湯や治打撲一方での用いられ方より、駆瘀血作用、解毒作用があり、桜皮エキスの使用背景から、去痰作用もあるものと考えられます。
また、タンニンを多く含む事から、収斂止血作用もあるものと考えられます。性味は平・辛ということで、発散作用があることを伺わせます。
出来てしまった瘀血や湿毒の凝集を解散させるのを助けると思われます。以上より、成分は違えど、樸樕と桜皮の基本的な効は同じと考えて良いと思われます。
蛇足ですが、昨今、咳止め痰切りの医薬品の供給不足が続いています。桜皮を煎じて蜂蜜を入れて飲むだけでもかなり楽になりそうな気がしています。
注意点は、これら解毒駆瘀血作用というものは正気を使用するという所です。そのため、気虚裏寒などのあるものには注意が必要です。
ですが、桜皮エキスの用いられ方ではその辺りは考慮されない為、よっぽど状態が悪くなければ使用可能としておいて良いでしょう。
また、十味敗毒湯や治打撲一方は、それらの処方自体が気虚裏寒には不適となっています。
代表処方
十味敗毒湯
十味敗毒湯は、江戸時代の医師である華岡青洲先生が創方した「十味敗毒散」が元となります。それを浅田宗伯先生が改良し、今の「十味敗毒湯」を作られたという経緯があります。
その名の通り、身体の毒消しの処方となります。樸樕と桜皮のどちらかが入り、いずれも解毒駆瘀血作用を期待されています。
どちらかが入るということですが、華岡青洲先生が十味敗毒散を用いるにあたり、樸樕に代えて桜皮を使用したのがその始まりになります。
十味敗毒湯については、以下の記事をご覧ください。
【漢方:6番】十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)の効果や副作用の解りやすい説明
続きを見る
治打撲一方
治打撲一方は、打撲時に出来た瘀血を処理し、治りを早める処方です。
本処方には樸樕が入り、駆瘀血、解毒作用がその目的とされています。
治打撲一方については、以下の記事をご覧ください。
【漢方:89番】治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)の効果や副作用の解りやすい説明
続きを見る
最後に
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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