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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:67番】女神散(にょしんさん)の効果や副作用の解りやすい説明

投稿日:

女神散

女神散

ポイント

この記事では、女神散についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、女神散についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は女神散という漢方が出ています。血の道症や眩暈、ふらつき等を治す薬でもあります。今日はどうされましたか?

〇〇ですね。お悩みの症状に、先生はこのお薬が合うと判断されたようです。名前に女とありますが、性別関係なく使えます。

このお薬は、食欲が無くなったり身体が冷えて来ると効果が悪くなりますので、体調管理にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は女神散という漢方が出ています。女性の血の道症や眩暈、ふらつき等を治す薬ですが、ストレスの多い男性の薬でもあります。

今日はどうされましたか?

〇〇ですね。お悩みの症状に、先生はこのお薬が合うと判断されたようです。

性別関係なく使え、気鬱というボーッとした感じや上半身の熱感も取れると思いますので、一度お試しください。

このお薬は、食欲が無くなったり身体が冷えて来ると効果が悪くなりますので、体調管理にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

肝機能障害、黄疸

過敏症(発疹、発赤、そう痒、蕁麻疹等)

消化器(食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢等)

冷え

添付文書(ツムラ67番)

ツムラ女神散(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

女神散についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

当帰3、川芎3、蒼朮3、香附子3、人参2、桂皮2、黄芩2、檳榔子2、黄連1、木香1、丁子1、甘草1

出典

本朝経験方(条文は浅田宗伯家方)

条文(書き下し)

「血証、上衝、眩暈を治し、産前後通治の剤なり。」

条文(現代語訳)

「血の道症、気の上逆、眩暈を治し、産前産後の共通の薬です。」

解説

今回は、女神散の解説になります。女神散は、元々「安栄湯(あんえいとう)」と言い、武士が刀傷を受けた際に用いられる処方であり、男性の薬でした。

しかし、刀傷を受ける事が少なくなり、それを女性の血の道症に使った所、著効した為「女神散」という名前になったそうです。

まず、条文を見ていきます。条文は簡潔に「産前産後の血の道症で、気が上がって眩暈のするもの」とだけあります。

非常に短いのですが、この一文だけで、血の流れが悪い事と、気が上がってフラフラしている「気鬱」「気逆」という状態であることが解ります。

次に、構成生薬を見ていきます。12種類(本来は大黄も入るので13種)と多いのですが、分類しますと以下の様になります。

活血:当帰、川芎

理気:香附子、木香、丁子

上衝した気を巡らす:桂皮

心肺の清熱:黄芩、黄連

破気:檳榔子

健胃・温中散寒:蒼朮、人参、丁子、甘草

緩和・諸薬をまとめる:甘草

ポイントは香附子で、気鬱を晴らす効能があります。また、当帰の配合により、血は熱により滞っているのではなく、冷えて滞っている事が解ります。

これらの生薬構成と条文から、女神散は「胃が冷え、血が冷えて滞り、上焦に気滞や気逆、邪熱の存在するものに適応し、女性の気鬱を伴う血の道症に非常に合う処方」だと言えます。

また、男性に使う場合もご紹介します。繰り返しになりますが、元々、女神散は安栄湯と言って武士の刀傷の薬でした。

傷を治す為に補血の当帰と川芎が、傷による痛みや熱、精神錯乱を緩和する為に気剤が配合されています。

平和な現代で使う場合、ストレスの多い企業戦士に合う処方になります。女神散は、裏寒や著しい脾虚がある場合は不適になりますので、注意が必要です。

鑑別

女神散との鑑別処方は、代表的なものに芎帰調血飲、川芎茶調散、竜胆瀉肝湯があります。各処方について、それぞれ鑑別方法をご紹介します。

芎帰調血飲

芎帰調血飲は女神散と同じく香附子配合処方になります。気鬱を除く利気剤と呼ばれる生薬ですね。

ですが、芎帰調血飲は産前には使えず産後のみ、女神散は産前産後両方に使用可能となっています。その辺りの違いをご説明します。

現在では「産後の一切の気血を調理する。」という文句で芎帰調血飲が産後の処方として有名ですが、その構成生薬には牡丹皮を含みます。

牡丹皮は桂枝茯苓丸等にも含まれ、瘀血(広義には熱毒の邪)を除く作用があります。ですので、妊娠時には漢方医学では禁忌とされています。

逆に女神散は牡丹皮を含まず、当帰が含まれますので活血作用となります。つまり、血が冷えて滞っている事になります。

当帰か牡丹皮か、という違いがポイント(瘀血所見か補血所見かの違い)になりますが、血の道症の処方の場合は他処方でもこの部分がポイントになる場合が多いです。

また、芎帰調血飲より女神散の方が気鬱・気滞の程度が酷く、熱邪による顔の赤みや逆上せ症状等も酷くなります。その辺りで鑑別が可能となります。

川芎茶調散

川芎茶調散は頭痛の薬として有名です。女神散と同じく香附子を含み、気鬱の処方と言えます。

川芎茶調散は、女神散に入る清熱と補脾・健胃の生薬が入らず、ほぼ頭部の風湿熱の邪を除く効果のみとなっています。

ですので、熱状が無い、補血の必要が無い、酷い頭痛があるかどうか、で女神散と鑑別が可能となります。

竜胆瀉肝湯

こちらは女神散の元々の名前である安栄湯として使う場合に注意が必要です。竜胆瀉肝湯は「男性の保健薬」であり、武士の様に肝気過多の場合が多いです。

女神散との鑑別ですが、竜胆瀉肝湯は腹の底にマグマのような怒りを内包して要る場合に使用します。

皮膚が浅黒く、胸脇苦満があり、目つきの鋭いといった肝鬱所見が見られます。日本海軍の東郷平八郎の様な顔つき体つきの方は竜胆瀉肝湯が一般的に合います。

女神散の場合は肝鬱や肝気過多の所見が無く、どちらかと言うと血虚+風熱気逆気鬱があり陽明の熱になりますので、顔が赤い事が多い印象です。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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