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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:33番】大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)の効果や副作用の解りやすい説明

更新日:

ポイント

この記事では、大黄牡丹皮湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、大黄牡丹皮湯の解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料としてご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、大黄牡丹皮湯という名前の漢方が出ています。一般的には月経困難や痔、便秘等で使われる事が多い薬ですね。

今日はどのような症状でかかられましたか(患者さんの症状の聞き出し)?

〇〇といった症状に、この漢方薬が合うと先生は考えられたようですね。

毒出しの漢方になりますので、体調を整えて身体を冷やさないようにしますとよく効いてきます。一度お試し下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、大黄牡丹皮湯という名前の漢方が出ています。

一般的には月経困難や痔、便秘等で使われる事が多い薬ですが、昔は虫垂炎の薬として使われていました。

今日はどのような症状でかかられましたか(患者さんの症状の聞き出し)?

〇〇といった症状に、この漢方薬が合うと先生は考えられたようですね。瘀血を除く毒出しの漢方になりますので、身体に毒を除く元気が必要になります。

体調を整えて身体を冷やさないようにしますとよく効いてきます。

一度お試し下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢等

冷え

添付文書(ツムラ33番)

ツムラ大黄牡丹皮湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

大黄牡丹皮湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

冬瓜子6、桃仁4、牡丹皮4、大黄2、芒硝1.8

出典

金匱要略

条文(書き下し)

「腸癰(ちょうよう)、少腹腫痞し、これを按ずれば即ち痛み、淋の如くも、小便自ら調い、時々発熱し、自汗出でて、復た悪寒す。其の脉遅緊にして、膿未だ成らざる証。之を下すべし、当に血有るべし。脉洪数なる者、膿已に成す、下すべからざる也。大黄牡丹皮湯之を主る」

条文(現代語訳)

「虫垂炎、へその斜め下が腫れてつかえ、これを押してみると痛みが出て、膀胱炎等の泌尿器の病気みたいに感じが、尿は自然に出て、時々発熱して、汗が出て、繰り返し寒気がします。その脈は遅緊で、膿んではまだいない状態です。これを下しますが、それは悪い血があるからです。脈が洪数の者は、膿んでいるので、下してはいけません。大黄牡丹皮湯がこれを治します。」

解説

腸癰(ちょうよう)というのは、現代では虫垂炎の事と言われています。手術が無かったこの時代、大黄牡丹皮湯みたいな処方はよく使われたと思います。

現代では、抗生物質や手術が出来ますので、虫垂炎には殆ど使われず、月経困難や痔、便秘などに使われています。

条文を見ていくと、「少腹腫痞(しょうふくしゅひ)」という言葉が出てきます。これは、臍の斜め下辺りが腫れている状態で、そこを押すと痛いという事です。

「淋(りん)の如く」というのは、膀胱炎、排尿異常等を指します(泌尿器系の場合は小腹(臍下)の圧痛なので、位置もズレています)。

後は、「時々発熱、発汗、悪寒等の症状があり脈が遅く緊ならば化膿する手前なので下せ。」という事を言っています。

また、「化膿してしまったら、膿が患部外に散らばる為下すな。」とも言っています。

大黄牡丹皮湯は大黄が入っており、下す処方ですので、直前の化膿してしまった後の状態には使えないという訳です。

この辺りの使い分けは後で書いて行きます。

次に、生薬構成を見ていきます。

冬瓜子は、この大黄牡丹皮湯や腸癰湯等の虫垂炎に使われた処方に特徴的な生薬で、腸の中の炎症や腫れがある場合に消腫目的で使われます。

後の4種(桃仁、牡丹皮、大黄、芒硝)は駆瘀血剤となりますので、条文通り化膿手前で瘀血として存在している状態で使用する処方と言えます。

応用的に使用するとしますと、化膿一歩手前の病態に使う事が出来ると思います。
桂枝茯苓丸にも処方構成がまあまあ似ていますので、瘀血実熱の毒取りとして薬籠に入れて置くと良さそうです。

本処方は、処方中に身体を冷やす生薬が配合され、また、人参等の補気・補脾の薬が入っていませんので、裏寒・脾虚に十分注意しながら使用する必要があります。

鑑別

大黄牡丹皮湯は、他の虫垂炎に使われる処方との鑑別が必要になります。

一般的に漢方で使いやすい処方としては、腸癰湯(ちょうようとう)、薏苡附子敗醤散(よくいぶしはいしょうさん)等があります(どちらもマニアックですが)。

腸癰湯

まずは腸癰湯との鑑別ですが、腸癰湯の条文の千金方には「腸癰,膿成脈數(膿成脈数),不可下。」とあり、「虫垂炎で化膿して下せないもの。」となっています。

要は、大黄牡丹皮湯の条文で「化膿して下してはいけない状態になったもの」に使うとされています。

下してはいけないという事は、お通じはあると考えて良さそうです。

恐らく虫垂炎で使う事は無いと思われますが、もし使う場合は、脈の判断と腹証で使い分けが必要となります(脈が遅くて緊なら大黄牡丹皮湯、脈数なら腸癰湯や薏苡附子敗醤散)。

月経困難証や子宮筋腫等で使う場合も、同様に鑑別します。

薏苡附子敗醤散

これも聞きなれない漢方の名前ですが、薏苡仁、附子、敗醤根の3つの生薬からなります(生薬単剤を混ぜ合わせるしかありません)。

これは、腸癰だが、しこり等が無く脈が数の場合に使われると書かれています。

現代医学的に言いますと、「虫垂炎が化膿し、それが破裂した状態に使う。」になりそうです。

これも、大黄牡丹皮湯との違いは脈の差で鑑別する事が必要になります。

まとめ

まとめますと、こうなります。

大黄牡丹皮湯(虫垂炎で化膿手前)→腸癰湯(虫垂炎で化膿したもの)→薏苡附子敗醤散(虫垂炎で化膿部位が破裂したもの)

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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